第66話 サパーノ村
ミドウッドの町の北東にあるサパーノ村に到着した。
思ったより時間は掛からなかった。この村は、町から遠いと言うほどではない。
出発が早かったせいもあって、まだ昼になるまで大分時間がありそうだな。
村までの道中、エドさんのパーティメンバーとの会話は無かった。
エドさんともう一人の剣士は、ずっと不機嫌顔だし、残り二人はこっちをチラ見していたが話し掛けてはこなかった。
正直、こちらから話し掛ける雰囲気でもなかった。き、嫌われてるんすかね、、、
馬車から降りると、村人らしい老人が出迎えてくれた。
「よく来てくれたのう。わしはこの村の村長の父のカルデンじゃ。本来は村長が出迎えるべきじゃが、今は村の防壁の補強作業の指揮で手が離せんのでな」
エドさんが進み出て答える。
「いえ、お構いなく。私はこのパーティのリーダーのエドです」
その後、パーティメンバーを紹介したエドさんは俺の方を見て、目配せした。
「どうも。合同パーティを組んでいるCランク冒険者のオーマです。よろしく」
「うむ、よろしく頼みますぞ」
早速、カルデンさんから状況の説明を受ける。
まあ、特に新しい情報は無かった。逆に言えば、まだ魔獣の被害は出ていないという事だな。
「では、みなさんの宿泊場所に案内しますかな」
説明を終えたカルデンさんがそう言ったが、エドさんは首を振った。
「お気持ちはありがたいが、先に目撃情報のあった村の西の森の調査を行いたいと思います。昼頃には戻るつもりです」
「そうですか。それはありがたい」
カルデンさんは頭を下げた。
エドさんが俺の方に向いた。
「おい、オーマ!お前は村に残って、村の手伝いをしろ。俺達は村の周りを調査してくる」
「ああ、了解だ」
俺は素直にそう答えた。
ちょっとハブられ感あるけど、あっちはパーティだからな。
普段の連携とかもあるだろうし、部外者は邪魔になるかもしれない。
連携とかが見れないのは残念だが、まあ、いいか。
エドさんのパーティは村から出て、調査に向かった。
「さて、俺は何を手伝いますか?」
「そうさのう」
カルデンさんは少し考える。
「まあ、防壁の補強作業の手伝いかのう。作業をしている場所に案内してやろう」
「お願いします」
カルデンさんに案内されて、村の周りで木造の壁を補強している場所に来た。
周りの人達に指示を出している人にカルデンさんが声を掛ける。
「おーい、モーデン。依頼で頼んでおった冒険者が来たぞ」
相手はこちらにやって来た。
「えーと、彼一人だけかい?父さん」
「いや、別に四人組のパーティが来たぞ。あっちは森の調査に行った。彼は村の方の手伝いじゃと」
「はい。あ、俺はオーマです。よろしく」
「ああ、私は村長のモーデンだ。よろしく頼む。で、こちらの手伝いかね?ふーむ。手伝いは欲しいが、、、」
モーデンさんは、俺の方を見ていたが、多少言い辛そうに声を掛けて来た。
「今、人手が必要なのは、木を切り出して、村まで運搬して壁を補強することなんだが、、かなりの力仕事でね。えーと、手伝いを頼めるかい?」
「ええ、大丈夫ですよ」
いやまあ、俺は冒険者としては小柄だから不安に思うのはわかるけどね。
こっちの世界に召喚されてから向こうの世界に居た時より腕力が強くなってるから結構大丈夫だ。
「それなら、村の東側の森の入り口辺りで木を伐っているから、木の運搬を手伝ってくれないか」
「はい。じゃあ、早速行って来ます」
「うむ、怪我をせんように気を付けるんじゃぞ」
モーデンさんとカルデンさんに見送られてその場を後にした。
俺は村の東側の木を伐り出している場所に来た。
「すいません。村に来た冒険者のオーマと言います。木の運搬の手伝いをする様に村長さんに言われたんだけど、手伝えることはありますか?」
「ん?村に来た冒険者?他の連中はどうした?パーティが来るって聞いたぞ?」
現場監督らしい村人の男が応じてくれた。
「他の人達は森の調査に行きました。俺は村の方の手伝いです」
「ふーん?」
現場監督は俺の方を値踏みする様に見た。
「、、まあ、今は一人でも多く人手は欲しいからなあ。いいいだろう、ここから村長の居る所まで材木を運ぶのを手伝ってくれ」
「ええ、分かりました」
伐採された木が集められた所に行く。
「材木の運搬の手伝いに来ました」
材木を運んでいる人達に声を掛ける。
「お、そうかい!じゃあ、頼もうか」
周りを見回すと、体格の良いおっさん衆が三、四人組になって材木を運んでいる。
ふーむ。
「材木が収納魔法に仕舞えるか、ちょっと試したいんだけどいいですかね?」
一応、確認してみる。
「ん?いや、入るわけ無いだろ?」
「ちょっと試すだけです」
俺は材木の一本に近付き、試してみた。
うん、収納出来たな。もっといけるか確認するか。
とりあえず、五本ほどあった枝の払われた材木を全て収納した。
「あっちの枝の付いてる方も運んでいいですかね?」
「へ?ああ?え?」
なんか驚かれているが。まあ、思ったより収納出来てるから俺も驚いてる。
この際だから、入るだけ入れてみよう。
枝を払っていない木も五本ほど収納する。余裕で収納出来たな。
今の所、伐採された木はこれだけらしい。
「とりあえず、今、収納した分を運んできますね」
近くに居た現場監督に聞く。
「え?、、ああ、そうだな、、お前ら一緒に行け。
枝払いは向こうでやってくれ。どうせ、払った枝も後で村に運ぶことになるからな」
「へーい」
現場監督の指示で、枝払いをしていた人達も俺と共に村に戻る。
ちなみに、山になっていた払った枝も全部収納して来た。
村の近くに材木を積み下ろし、伐採場所に戻る。
元々材木の運搬をしていた人達も伐採に回ったので、伐ったそばからどんどん収納して運ぶ。
「おーい、オーマさん。材木の量は十分だ。俺達もそろそろ村に戻るぞ。!」
現場監督に声を掛けられた。
「へーい」
残りの材木を収納した俺と伐採に来ていた人達はぞろぞろと村に戻る。
「しっかし、あんたみたいな収納魔法の使い手もいるんだなあ!あんな容量の奴なんて聞いた事無いぞ!」
「はっはっは!おかげで作業が早く終わったぜ!」
「そーだな!あんた、収納魔法だけで食っていけるな」
上機嫌のおっさん達にバンバンと肩を叩かれる。
「はは、そうかもね」
正直、、暑苦しいっす!
村に戻り、残りの材木を積み下ろすと、現場監督がこちらに来た。
「お疲れさん。一休みして昼食にしてくれ。村の広場に用意してある」
「ああ、分かった。行ってくるよ」
広場に行くと、沢山のテーブルが並べられた所で村人達が食事を取っていた。
賑やかな様子で、昼食会みたいだ。テレビの旅紀行番組でこんな感じの光景を見たな。イタリアの田舎とかのやつ。
「あら、あんた、村に来た冒険者だね?お昼かい?こっちに座りなよ!」
配膳をしていたおばちゃんに呼ばれて席につく・
「田舎料理だから口に合うか分からないけど、おあがりよ」
おばちゃんはすぐに料理を持って来てくれた。
「どうも、ありがとう。いただきます」
、、これは、、
麵料理だ。赤いソースが絡めてある。ソースの具はぶつ切りのソーセージとタマネギなんかの野菜だ。
ナ、ナポリタンなのか?いや、味も確認しないと。
一口食べてみる。
「ナポリタンだ、コレ!」
「ひゃあ!?何だい!?口に合わなかったかい?」
おばちゃんを驚かせてしまった。
「驚かせてごめん。これ、元のせ、、俺の故郷の料理と同じなんだ」
「あら、そうなのかい。他の土地にもあるんだねえ」
「ああ、、うん」
俺は黙々とナポリタンを食べる。
大鹿亭のとんかつソース味は普段から食べてるから、それほど気にならないが、これはマジで久しぶりだからな。
不意打ち的なのもあって、ちょっと涙が出そうになった。
「お腹が空いてるのかい?お代わりしてもいいんだよ?」
「久しぶりで、、懐かしくて、、」
この世界に来てから、懐かしいというほどの時間は経っていないと思うが、、それでもな。
結局、二杯ほどお代わりしてしまった。
俺、大食いになってきた?大鹿亭のドカ盛り飯の影響か?
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