第65話 新たな依頼
受付カウンターで、アリサさんから急ぎの依頼とやらの話を聞く。
この町の北東にあるサパーノ村の近くに魔獣が複数現れたらしい。
その調査と、可能なら討伐するという依頼の様だ。
日時は明日出発で、期間は数日程度だとか。まあ、緊急性が高いからだろう。
で、この依頼は俺一人で受けるわけではないとの事なんだが、、
「合同パーティ?」
「この場合は、合同と言うより助っ人と言った所でしょうか。相手のパーティの戦力強化が目的です。
合同相手は中堅で信頼もあるBランクパーティですが、今回の依頼では念のため人員を追加することになりました」
あー、この前、ギルドマスターが言ってた奴か。他のパーティの依頼に俺をねじ込むとか言ってたな。
「他の助っ人は居るの?」
「居ませんよ?オーマさん一人です」
「いや、俺一人増えても、そこまで戦力にならないんじゃ、、」
Bランクパーティとか強そうだからな。役割分担で連携したりして隙が無いイメージだ。
だが、アリサさんは呆れ顔だ。
「オーマさん一人でかなりの戦力強化になりますよ。
(むしろ、オーマさんが主戦力で、人手の要る索敵や調査が相手パーティの仕事になりそうです。)」
「え?何?」
「何でもありませんよ?」
なんか、最後の方聞き取れなかったけど?
「それより、この依頼はお受けいただけますね?」
「ええ、受けますよ。お勧めなんでしょ?」
ま、受けざるを得ないんでしょ?
「ええ、勿論。では、受注書類にサインをお願いします」
「はいはい」
俺は素直に書類にサインして、依頼を受注した。
依頼を受けた次の日の朝、俺と合同相手のBランクパーティは冒険者ギルドに集合した。
相手パーティは、金属鎧を着けた剣士が二人、革鎧の弓装備が一人、革鎧で杖を持っているのが一人。
杖装備のは魔法使いだろうか?前衛二人、後衛二人の四人パーティってとこだな。
「おはようございます。Cランク冒険者のオーマです。今回の依頼ではお世話になります」
まあ、相手パーティはBランクだからね。知らない人達だし。
相手パーティの剣士の一人が話しかけてきた。
「ああ。俺はこのパーティのリーダーのエドだ。一応メンバーを紹介しておく」
エドさんはざっとパーティメンバーを紹介してくれたが、、なんか全員よそよそしい。
アリサさんの方を伺うと、困ったような顔をしている。
「では、みなさん。依頼のあった村から、迎えの馬車が来ていますので、そちらへどうぞ」
俺達がギルドの出入り口に向かった時、ギルドに誰か入って来た。
あ、ノーラだ。珍しいな。
俺に気付いたノーラが声を上げた。
「あら!オーマじゃない!久しぶりね」
「ノーラ、久しぶりだな」
「どう?しっかりやってる?」
「ああ、まあね?」
「それは良かったわ」
ノーラは笑顔になった。ぐぬ、やっぱ美人さんやな。
「おい!オーマ!早く来い!」
おっと、エドさんに怒鳴られてしまった。不機嫌そうな顔だ。
「すいません、すぐ行きます」
「ごめん。出かけるところだったのね」
ノーラがすまなそうに言った。
「いいよ。じゃ、行ってくる。またな」
「気を付けて行きなさいよ」
俺はノーラに手を振ると、エドさん達の乗った幌馬車の方に走って行った。
「ノーラと知り合いなのか?」
不機嫌な顔のエドさんにそう聞かれた。
「ええ、まあ」
「ふん。早く馬車に乗れ」
うーん。俺、この人に嫌われてるのかねえ、、、
俺が幌馬車に乗り込むと、依頼のあった村に向かって出発した。
*****
オーマを見送った後、ノーラはギルド本館の二階、ギルドマスターの執務室に通される。
彼女は、ナンデール王国が再度異世界人を召喚するという情報により、確認の為にナンデールに単独で潜入していた。
目撃した内容をグリゼルダに報告する。
一通り話を聞いたグリゼルダが口を開く。
「ナンデール王国は、今回の召喚では「勇者」を得たという事ね、、」
「ええ。遠目だったけど、召喚の神殿から連れ出される人物を見たわ」
「どのような人物だったの?」
「かなり小柄だったわ。魔力はなかなかのもの、かしら。騎士達に囲まれて馬車に乗せられて行ったわ」
「小柄ね、、子供という事なのかしらね?」
グリゼルダは悲痛な表情で眉根を寄せる。
「おそらくは。肌の色は私達と同じだから、ゴブリンという事は無い筈よ」
「うーん。後は、こちらから送り込んである間者からの情報を待つしかないわね」
グリゼルダはため息をつき、そう言った。
「そうなるけど、あまり無理はさせられないでしょ」
「、、当面は、ナンデールの出方を見るしかなさそうね」
ノーラも同意して頷いた
しばらくの沈黙の後、ノーラは口を開いた。
「ところで、、オーマの様子はどう?」
硬い表情だったグリゼルダの顔が和らぐ。
「ふふ、なかなかの活躍よ。強力な魔獣をあっさり討伐したり、人助けをしたりね。あなたが気に掛けるだけの事はあるわね?」
「そう、、」
「あなた、彼の事、どう思っているの?」
「え?!」
「やっぱり彼が一度目の召喚の時に逃亡した異世界人なのかしら?」
「、、あなたもそう考えるのね。私もそう疑っているんだけど、確証が無いのよね、、」
「彼の事は本部に報告したの?」
「ええ。でも、ギルドからの手出しは控えるように進言したわ」
「あら、随分とお優しいのね?」
グリゼルダはニヤニヤしながらそう言った。
「むー。彼は、、まあ、いい人だもの。王国にもギルドにも益になるわよ?」
「ふふ、それだけかしらね?」
「そーれーだーけーでーすー。もー!私、そろそろ行くわよ?今日は町に泊まらずに王都に発つんだから」
「はいはい。お疲れ様」
「じゃあね」
ノーラはギルドマスターの執務室から退出した。
それを見送ったグリゼルダは、クスクス笑うと呟く。
「ふふ、若いわねえ」
*****
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