第51話 討伐完了報告




「さて、これで一通り片付いたか?」

 ザックさんが話かけてきた。


「俺の方はいいかな?」

 俺は冒険者達の方を見た。


「ああ、こちらの話もついた。お騒がせして申し訳なかった」

 マイヤーさんがザックさんに答えた。

「いいってことよ。仕事だからな。まあ、怪我人が出なくてよかったぜ。平和が一番だからな」


 ザックさんは俺の方に向き直って続ける。

「さて、オーマよ。俺達は周辺の確認に行ってくるから、お前、冒険者ギルドに報告に行ってくれ」

「報告?」

「ああ。町の周りに魔獣が現れた場合、冒険者ギルドにも報告を入れるんだ。

どうせ、さっきの獲物をギルドに売りに行くんだろ?

普段は目撃情報と討伐完了は別に報告するのがほとんどだが、今回はすでに討伐済みだからな。

緊急性が下がったし、こっちからは周辺の確認が済んだ後の報告だけでいい」

「なるほど。分かった。報告しておくよ」

「おう。よろしく頼むぜ。緊急報告って言えば、最優先で受け付けてくれるからな。

あ、そうだ。ついでに西門の衛兵にも報告頼むわ。討伐完了と俺達が周辺の確認に行ったって事を伝えといてくれ」

「お、おう。、、ちょっと人使い荒くない?」

「まあまあ。ついでだよ、ついで。頼むぜ」

「ま、、いいけどさー」


「じゃあ、俺も一緒に戻るぞ、オーマ」

 サムエルさんも町に戻るようだ。


「、、あー、サムよ。すまないがちょっと頼みたい仕事があってな」

 マイヤーさんがサムエルさんに話しかけた。

「い、いや、流石に今日はもうな、、」

「そこを何とか頼む!さっきの騒ぎで獲物が置き去りになってるんだ。結構大物だから諦めるのは惜しい」

「しかしな、、」


 そこでザックさんが割って入った。

「サム。俺達が護衛してやる。どうせ、魔獣との遭遇現場までいくからな」

「うーむ。それならいいか」

「恩に着るぜ。ザック!」

「まあ、仕事のついでだ。道すがら事情聴収もするぞ?被害が出てれば、お前ら懲罰ものの事案だったんだからな?」

「う、お手柔らかに頼むぜ、、」

「よし、話はついたな。オーマ、そっちの方はよろしく頼む」

「へいへい」


 俺は軽く手を振ってから、町に向かって小道を走り出した。



 町の西門に戻って来たが、今は人の列がない。

 その代わりに、武器を構えた衛兵達が周囲を警戒していた。

 その一人が俺に気付いた。


「おいっ!あんた!早く町に入れ!町の近くに魔獣が着てるって情報があったんだ!」

 俺は衛兵達に近付いて答える。

「それに関して報告がある」


 魔獣が討伐済みな事とザックさんたちが周囲の確認に行った事を伝えた。

「詳しい事はザックさん達が帰ってきたら聞いてくれ」

「分かった。討伐は済んでるんだな。念のため俺達は警戒体制のまま、確認に行った連中の帰りを待つよ。報告ご苦労さん」

「はいよ。じゃあ、俺は冒険者ギルドの方にも報告に行くんで、後はよろしく」

「おう!お疲れさん!」

 俺は軽く頭を下げて門を後にした。



 冒険者ギルドに着いて、受付カウンターのあるホールに入ると、何やら落ち着きがない雰囲気だった。それに人も多い。

 魔獣騒ぎで、森の方から戻って来た冒険者達みたいだな。


 受付カウンターに行くと、アリサさんが居た。人は並んでいないので、そのまま話しかける。

「あの、、緊急報告があるんですけど」

「え?!緊急ですか?先程、町に魔獣が接近したとの情報がありましたが、それに関連する事でしょうか?」」


 俺はアリサさんに一通りの事情を説明した。

 他の職員の人達も一緒に聞いている。アリサさんは報告内容を書類に書き込んでいる様だ。


「もう討伐が完了しているんですね。よかった」

 アリサさんはホッとした表情で答えた。


「後は衛兵隊の確認が済めば大丈夫ですかね?」

「ええ。他の魔獣が居る可能性は低そうですし、一安心ですね」

 アリサさんはそう言って、にっこりと笑った。うん、笑顔が一番やな。


「それにしても、オーマさん。今回の件はかなりの実績になりますよ。

偶然居合わせたとは言え、迅速な討伐のおかげで被害が出ずに済みましたからね」     

「はは、どういたしまして。じゃあ、報告は完了と言う事で。俺はさっき討伐した奴を売りに行きますんで、後はよろしく」

「あ、私もご一緒します。討伐した魔獣の確認と記録が必要ですから」

 受付カウンターを他の職員に替わってもらったアリサさんは一緒に買取棟に来る様だ。


 買取棟に行くと、カウンターにはヨシュア君が居たので話し掛ける。

「こんちは、ヨシュア君。獲物の買取りを頼んます。あ、薬草もあるんで、そっちもよろしく」

「どうも、こんにちは、オーマさん。今日は両方なんですね。アブドラさんを呼んできます。薬草の方はこちらのトレイにお願いします」

 ヨシュア君は、いつものトレイをこっちに渡してから、隣の解体場の方に行った。


 しばらくすると、解体場の方からアブドラさんが顔を出した。ヨシュア君も受付に戻って来た。

「よお、オーマ。獲物か?ちょうど場所が開いてるから、こっちに持って来い」

「はいよ」

「オーマさん!僕は薬草の査定をやっておきますから、後で忘れずに報酬の受け取りに来てくださいよ」

「うん、分かった。じゃあ、後で」


 俺とアリサさんは解体場に入る。

「ん?アリサちゃんもこっちに用があるのか?」

「ええ。オーマさんが持って来たのは、先刻町に接近して、その場でオーマさんに討伐された魔獣ですので。」

「オーマ、お前、現場に居合わせたのか。被害は出たのか?」

「特には出てないよ。すぐ仕留めたし」

「流石オーマだぜ。獲物を見るのが楽しみだ。さあ、こっちの台に出してくれ」

「はいよ」


 俺は倒したスパイクボアを解体台に出した。

「おう、中々の大物だ。こいつに出会った連中は、かなり森の奥まで行った様だな。無茶しやがって」

「そうなのか?」

「この大きさの奴は奥の方にしかいない。魔獣を連れて来て被害が出れば懲罰ものだってのに不注意な連中だぜ。

まあ、今回はお前に助けられたってわけだ」


「あの、、オーマさんはこんな大きな魔獣を単独で討伐したんですか?」

「え?そうだけど?」

「こいつは、たまに大物を取って来るんだ。今更驚く事でもないぜ」

「そ、そうなんですか」


「さーて、先ずは計量といくか。

おっと、オーマ、こいつは個別依頼扱いになるから、今回の件の事後処理が済むまでは報酬の受け渡しはできないからな。

その代わり、討伐報酬と褒賞金が追加で出るからな」

「へー、そういうものなのか」

「ええ。特に今回は即座に討伐されましたし、被害を防いだと言う事になりますからね」

「てなわけだから、後は俺達に任せておけ」

「オーマさん。明日受付カウンターの方に来てくださいね。

当事者パーティの事情聴収と衛兵隊からの確認報告が完了すれば、報酬が確定すると思いますので」

「はい。じゃあ、後はよろしく」

「お疲れさまでした。オーマさん」


 俺は買取カウンターの方に戻って来た。

「こっちの方は終わったよ、ヨシュア君」

「はい。薬草の査定も終わってます。書類の確認お願いします」


 ヨシュア君が渡して来た書類を確認してサインして戻す。

「はい、確かに。

それにしても、あんなに大きなスパイクボアを単独で討伐なんて、やっぱりすごいんですね、オーマさんは」

「はは、まあ、多少はね?」

「ぷっ、多少、ですか」

 ヨシュア君は軽く噴き出したが、すぐに真面目な顔に戻った。


「それより買取金の受け渡しでしたね。、、ちゃんと確認して下さいよ?」

「分かってるって」

 俺は真面目に渡された買取金を確認っした。金勘定はちゃんとしないとね?

「うん。大丈夫だ。まいど」

「ええ、またお願いします。お疲れ様です」


 俺は軽く手を振って、買取棟を後にした。

 明日の朝、忘れずに討伐の報酬を取りに来ないとな。

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