第25話 久々の登板
東東京大会3回戦目。雨で一日延期になった。そろそろ梅雨も明けるだろう。梅雨の末期は土砂降りが降る。そして、たまに晴れるとすごく暑い。
今日からは、なんと遼悠が投げることになった。部活に復帰してからまだ1週間なのに、驚異的だ。だが、相変わらずの速球と、制球率。つまり、速い球を投げるし、コントロールも良いのだ。変化球も時々混ぜていた。
マネージャーとして、遼悠を無視し続ける事は出来なかった。気まずいとはいえ、もともと遼悠はぶっきらぼうで無愛想な奴だ。あんなに綺麗な顔立ちをしているのに、無愛想とは勿体ない。
「キャー!戸田くーん!」
「りょうゆうー!!」
と、スタンドから歓声が聞こえても、全くそっちを見る素振りも見せない。で、無視は出来ないので、話しかけた。
「遼悠、手の豆は大丈夫か?」
「え?ああ、休んでる間に治った。」
遼悠は僕をちらっと見たが、自分の手は見ずにそう答えた。相変わらずのぶっきらぼうで。
試合はだいぶ苦戦した。まだ本調子ではない遼悠は、思ったよりも打たれてしまい、何とか守備が頑張ってヒットを最小限に抑えたが、勝つには攻撃力が必須だった。
「とにかく打て。落ち着いてバットを振れば大丈夫だ。あのピッチャーは大した事ないぞ!」
監督がそう言って鼓舞した。僕も祈るような気持ちでバッターボックスを見つめた。試合は5回まで進んだが、両者得点無し。遼悠の肩も心配だった。
「そろそろピッチャーを替えるか。」
監督がそうつぶやいた時、
「ストラーイク、バッターアウト!」
と、三振を告げる主審の声が聞こえた。
「うーむ。」
腕組みをした監督は、思わず唸った。いいぞ遼悠、まだイケるよな。僕は心の中でそうつぶやいた。
試合が終わってみれば、僕らは勝っていた。2-0という接戦だった。次勝てば準々決勝へ進める。甲子園まであと4戦だ。
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