第12話 決勝戦9回裏!

 ズバン!

キャッチャーのミットに球が収まる。

「ストラーイク!バッターアウト!」

これで、アウト一つ取った。神様、仏様、あと2アウト!

 決勝戦、9回裏、我が東尾学園は守備。あとアウトを二つ取ったら、春の甲子園が決まるのだ。

 カキーン!

 打たれた!ボールが高く上がる。

「落ち着けー!」

監督が思わず叫ぶ。球はライト方向に上がり、ライトの関口が両手を広げてボールの下に立っていた。

「アウト!」

関口は無事ボールを取り、その瞬間審判が言った。あとアウト一つ!

 遼悠は振りかぶり、球を投げた。ズバン、とストレートが決まる。次は変化球。そして3球目。

 カキーン!

 球はレフト方向へ鋭く飛び、サードの田端が飛びつこうとしたけれど、わずかに届かず、レフトの石田が前へ走ってきて転がるボールを取った。バッターは既に一塁を回り、二塁ベースへ向かっていた。石田が二塁へ送球する。バッターは二塁で留まった。

 ああ、危ない危ない。ランナーは盗塁しようとリードする。遼悠は牽制球を二塁へ投げる。

 そして、遼悠は振りかぶった。投げる。ランナースタート!僕は祈った。もう、見ていられない。いやいや、スコアつけてるんだから、見なくちゃだめだ。

カキーン!

打たれた!高く上がった。

「センター!」

みんなが叫ぶ。僕も叫ぶ。センターの相馬の帽子が落ちた。

 パシッ!

 相馬が取った。そして、試合終了のサイレンが鳴り響いた。

「わー!!」

「やったー!!」

選手たちがベンチに走ってきた。そして、みな次々に僕に抱きついた。

「やったよ!やった!」

「うんうん。」

「瀬那、瀬那、勝ったぞ!」

「やったな!」

僕は泣けてきた。みんなが、僕に喜びをぶつけてくるのが、すっごく嬉しくて。

「瀬那!」

最後に、遼悠が僕の前に立った。

「遼悠、おめでとう。」

既に涙を流している僕は、声にならない言葉を、遼悠に言った。すると、遼悠は僕を抱きしめた。

「お前のおかげだよ、瀬那。」

「そんなこと、ない。お前が頑張ったから、だよ。」

そこへ、キャッチャーの正継が来て、僕たちを二人まとめて抱きしめた。

「やったな!さあ、整列するぞ。」


 そうして、僕らは甲子園への切符を手に入れた。

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