第3話 マネージャーとは

 新人戦が始まった。新しいレギュラーバッテリーは戸田と角谷正継(かどや まさつぐ)。戸田は剛速球を投げるというので、前評判が高かった。

 また、僕はスタンドで応援だった。それでも、嫉妬心を表に出さず、率先して声を出した。

「カッセーカッセー東尾!」

また、いつものこれで。


 試合は順調に勝っていった。特に投手の活躍が華々しく、三振を取りまくる。また準決勝で負けたけれど、学校内ではすっかり戸田が有名になった。

 有名になる、というよりも、人気者になった。戸田はそれなりに良い男なので、女子から絶大なる支持を受け、校内一のモテ男などと言われ始めた。

 そうなると、マネージャー希望の女子が集まり始めた。今までは学年に1人いれば良い方だったのに。ちなみに、3年生の女子マネが引退してしまった今、マネージャーは不在だった。だからこそ、僕がボール磨きなどを頑張っていたのだ。

 マネージャーとしての入部希望者が押し寄せたので、小野寺先生が面接をして、2人に絞ったらしい。2人の女子マネが入部してきた。藤倉花梨(ふじくら かりん)と水樹綾乃(みずき あやの)である。


 だが、これがまた・・・。

「マネージャー、これしまっておいて。」

誰かが言っても、聞こえないふり。絶対聞こえていると思うのに。

「マネージャー。」

「はーい!」

戸田がマネージャーと言えば、何も言わないうちから飛んでいって、戸田の欲しいものを渡す。誰が見ても不公平。

「花梨ちゃん、ボール磨きしよう!」

僕は、教えてあげようと思ってそう声をかけたのに、

「えー、私他にやる事があるので、先輩お願いしますぅ。」

と、言われてしまった。綾乃ちゃんを目で探すと、やっぱり戸田の近くにいる。何だよ、マネージャーって、何なんだよ。


 だが、腹を立てても仕方ない。マネージャーなんて、元々いなかったと思えばいいのだ。僕は相変わらずグラウンド整備やボール磨きを頑張った。そして、時々監督に褒めてもらった。

 監督は基本、一軍の練習しか見ていない。二軍が練習試合に出る時も、監督は一軍の練習や試合の方に行っていて、僕がいくら試合で頑張っても、直接監督に褒めてもらえる事は無い。だから、せめて態度とガッツで見込んでもらえれば。そう思って頑張っていたのに・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る