第2話 絶対に一軍に入ってやる!

 3年生が引退し、1、2年生だけとなった我が東尾学園野球部。新たに一軍と二軍に再編された。一軍二軍は部員の間での通称だ。本当はAチームBチームという。

「Aチームメンバーを発表する。」

顧問の小野寺先生が、メンバー表を見ながらそう言った。ミーティングルーム内である。場内は静まり返った。

「角谷、戸田、関口、吉田・・・。」

ガックシ。やっぱり僕の名前は呼ばれなかった。

「瀬那、お前は辞めないよな?」

僕の肩に手をかけ、清水道男がそう言った。

「もちろん、辞めないよ。来年までには絶対一軍に入るんだから。」

僕は拳を握りしめて、目をつり上げてそう言った。

「あはははは。頼もしいな。俺ももうちょっと頑張ってみようかな。」

清水はどこか寂しげに笑いながらそう言った。

 一軍に入れなかった2年生は、ごっそり退部する。ここで持ち堪えても3年生になる時にまたごっそり辞めるのだ。

 僕は諦めないぞ!・・・とはいえ、自信があるわけではない。

 小さい頃からずっと野球をやってきて、周りよりも上手い方だった。でも、名門校に入ってみると皆すごいやつばかり。ガッツだけは誰にも負けないつもりだったけど、ここへ来たらガッツのあるやつばかりだし。

 才能のあるやつはいいよな。戸田とか。


 僕はガッツを見せるため、練習はもちろんのこと、後始末も人一倍頑張った。グラウンド整備やボール磨き、用具の片付けなど。

「おお、瀬那、精が出るな。」

ボールを布でせっせと磨いていると、田北監督から声をかけられた。

「ハイ!」

嬉しくなって声のトーンも上がる。

 田北監督は厳しい練習をさせる人で有名だけど、部員に下の名前で呼びかける、気さくな人だった。練習着の背中にローマ字で名前が入っているので、全員の名前を覚えているかどうかは不明だけれど。

 僕の背中には「AIZAWA SENA」と書いてある。清水の背中には「SHIMIZU MICHIO」だ。そして、戸田の背中には「TODA RYOYU」・・・あいつは関係なかった。


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