3話 気持ち
馬車の中で不安そうな顔をしていながらルビアが待っていた。
「二人とも大丈夫?」
「あぁ」
「はい」
軽く相づちをうちながら座る。今回の戦いである程度ラッドくんの実力が分かった。はっきりいって予想以上の実力だった。
「ねえラッドくん。なんで私たちの護衛をしてくれるの?」
「リアム様と国王様から頼まれたからです」
「まあそうだよね。じゃあラッドくんの意思はどうなの?」
「俺の意志ですか?」
「うん。ラッドくんは私やノアのことを守りたいと思っている? できればラッドくんの気持ちを聞きたいな」
「...」
そう言えばそうだ。ラッドくんの意志が分からない。もしラッドくんがどうでもいいとかなら実力以前に信用問題になる。
「俺は...。俺はルビア様やノア様のことを守りたいと考えています。最初こそ仕事だからと考えていました。でもノア様には感謝していますし、ルビア様も同様に感謝しています」
「ノアのことを感謝しているのはわかるわ。ラッドくんを雇ってくれているんだもんね。でも私のことはなんで感謝しているの?」
するとラッドくんは周りを少し見渡し始めた。この馬車には俺とルビア、ラッドくんしかいない。
「お二人は俺の身元をわかっていますよね?」
「あぁ」
「はい」
さすがに雇い主として知らないわけにはいかない。でもルビアも知っていたのか。いや、知らない方がおかしいか。
「だからです。俺の身元を知っていたら普通はこんな自然に話すことなんてできないと思います。少しばかりでも気を使うと思います。ですがお二人は俺の過去を気にせず話してくれている。そんな人を守りたいと思うのはおかしなことですか?」
「おかしくはないわ」
「そうだな」
誰だって信用したいと思う人はいる。俺だったらルビアがその人物だし、他にもいろいろといる。今の発言からしてラッドくんにとってそう思える人物が俺たちになりかけているってことだと思う。
「はい。なのでお二人を全力をもって守りたいと思います」
「そう言うことなら私は何にも問題ないわ。ノアはどうなの?」
「俺も特に問題ないかな。でもラッドくん、一つだけいいかな?」
「はい?」
「この前も言ったけど、ラッドくん自身の命も大事にしてね? 俺もルビアもラッドくんが消えてしまうのは嫌だから」
先ほどの戦いでラッドくんがどう思って戦っているのかはおおよそわかった。おれやルビアのために戦ってくれていた。でもそれとは別にラッドくんは自分の死を軽視しているようにも見えた。
護衛という職業柄、自分の命を軽視してしまう。自分の命より主の命が最優先。そう思うのは当然である。でもだからと言って自分の命を軽視するのはよくない。俺だってこの前まで自分の命を軽視していた。でも俺が死んだら周りの人がどう思うか。それを考え始めてから考えが変わった。誰だって死んだら悲しむ人はいる。俺にそれを気づかせてくれたのは紛れもなくルビアだ。だからラッドくんにもそれを気付いてほしい。
「わかりました...」
「あぁ。今すぐには無理かもしれないけど、時間をかけてわかってくれればいいよ」
今すぐ分かれなんて無理なことだ。俺だって言われてすぐ「はい、分かりました」なんていえない。そう思える場面がなかったんだから。だから時間をかけてわかってほしい。ラッドくんが死んでしまったらどれだけの人が悲しむのかを。
多分だけどラッドくんは自分を必要としてくれている人はいないと考えているのかもしれない。そりゃあ俺だって同じ立場になったらそう考えてしまうかもしれない。王国は滅亡させられ、自分の知っている人物は消えてしまったのだから。だからこそ俺たちがラッドくんにとって必要な人になっていきたい。
「後1週間ほどで着くけどノアやラッドくんはどんなことを学びたいの?」
「そうだな...。闇魔法のほかにもいろいろと魔法のことが学びたいな。
「そっか。ノアって光属性以外なんでも使えるもんね。本当は魔法使いとかじゃないの? でも剣も使えるし魔剣士?」
「まあ魔法が使えるのは母さんのおかげだしな。でも母さん以上の魔法使いが魔法都市スクリーティアにはいるんだしいろいろと学んでいきたい」
魔法はある程度使えるけど、より使えるようになりたい。できれば剣術と組み合わせる魔法とかも学べたらいいと思ってるしな。
「うんうん! じゃあラッドくんは?」
「俺は...。わからないです。でも自分が知らないことを追求していきたいなと考えています」
「そっか! 私は魔法を使えるようになりたいな! そしたらノアやラッドくんの援護とかできるしね!」
何を言っているんだか...。ルビアは自分の身分を考えてほしい。でもルビアがこういっている以上否定するわけにはいかないし、ローリライ王国の方針で魔法都市スクリーティアに送り出すってことはそう言うことも考えられているのかもしれないしな。
そこから数日たって魔法都市スクリーティアに着いた。
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