4話 認めたくない気持ち


 お互い呆然とする。するとトニーさんが


「アレックスくんは私が呼んだんだ」


「え?」


「アレックスくんは私と一緒の職業である聖騎士であり、今後期待できる若手だから鍛えたいと思ってね」


「そ、そう言うことですか」


 俺は教わっている立場。トニーさんが誰を鍛えたいと思っても文句は言えない。


「それでノアはなんでいるんですか?」


「ノアくんには直々に教えてほしいと言われてね」


「あぁ~。そう言うことですか!」


 アレックスはこちらをニヤッと見ながら


「お前は自分で学びに来て、俺は学ばせてほしいってこと。お前と俺じゃトニーさんにとっての評価が違うってことだよ。これが世間での評価ってこと。お前がトニーさんに勝ったのだってなにかしたんだろ? だからオリバーからも見放されたんだよ。この前オリバーがパーティに誘った時了承しておけばよかったものを」


「...」


 まあトニーさんが俺よりアレックスの方を育てたいと思ったのかもしれない。


「アレックスくん、それは違うぞ。ノアくんが私に勝ったのは紛れもなく実力だ。戦いの最中になにかしたわけでも、運がよかったわけでもない」


「え?」


「ノアくんはすでに確立された実力を持っている。だから私から教えることはないと思っただけだ。実力が上がるにつれて教わる、というより自分から学ぶに変わる」


 トニーさんが俺を認めてくれていたことがものすごく嬉しかった。


「じゃあノアは実力でトニーさんに勝ったってことですか?」


「そう言うことだ。まだ私の方が強い部分もある。でも総合的に見たらノアくんの方が強い」


「...。そんなのあり得ない。あのノアですよ? トニーさんに勝てるはずがない」


 アレックスは俺を睨みながらトニーさんに大声で言う。もう一度トニーさんと戦って勝てるって確証がないから何とも言えなかった。


「アレックスくん。君はなんでそんなにノアくんのことが嫌いなんだい? 元パーティメンバーじゃないのか? 私は元組んでいたパーティメンバーを嫌う理由がわからないよ」


「それは...。こいつが戦闘面で活躍していなかったから...」


 まあそう思われていてもしょうがない。俺はこいつらが認識していなかった敵を殺していたのだから。


「本当にそうか? それはアレックスくんが知らなかっただけなんじゃないのか?」


「そんなはずない!」


 今にも俺を攻撃してきそうな勢いで言ってくる。


「だったらノアくんがパーティを抜けて後、戦闘している時きついと思ったことはなかったかい?」


「それは俺たちの調子が悪くなっただけで...。それに油断もしていたのかもしれませんし」


「数日間調子が悪くなるのはわかるが、長期間調子が悪くなるわけじゃない。それに油断していたわけでもないだろう。考えてみなさい。パーティメンバーが抜けた後、誰が油断なんてする? 普通は今までより警戒心をもってダンジョンに潜ったり、戦闘をするはずだろ?」


「...」


「君たちもこの前までノアくんたちとエーディリ王国にいたんじゃないのかい? その時、ノアくんが強いと思わなかったのかい?」


「...」


 アレックスは沈黙していた。沈黙しているってことは少しは認めてくれたってことかな?


「ではこう言うのはどうだい? ノアくんとアレックスくんで決闘を行うっていうのは?」


 その言葉に俺とアレックスは驚くが、すぐアレックスは俺を睨みつつも


「俺はいいですよ。ノアはどうなんだよ?」


「俺もいいですよ」


「では二人には決闘をしてもらおうか。ルールは魔法無し。それだけだ。武器はいくつでも使用可能にしよう」


「わかりました」


「はい」


 また魔法無しかと思いながらも決闘を行うことになった。でもこの決闘でアレックスの実力はわかるし、俺のためにもなる。


 草原に向かう途中、トニーさんが耳元で言ってくる。


「申し訳ない」


「いえ。こちらこそ練習になるのでいい機会です」


「そう言ってもらえると助かる。今のアレックスくんは慢心しているんだと思う。だからノアくん。頼んだよ」


 頼んだよって言われてもな。まだ勝てるかもわからないし...。


「できる限り頑張ります」


 俺とトニーさんが話しているところに割って入ってくる。


「何話しているのですか? 早く始めましょう!」


「そうだな。では開始しようか」


 俺とアレックスは一定の距離をとって合図を待つ。


「始め」


 トニーさんの合図と同時に模擬戦が開始した。

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