17話 勇者視点3
襲撃の日から四日たった。ミア様に報告されたこともあり、ローリライ王国からは支援がなくなり、もらえるかもしれなかった
「クソ! 全部あいつのせいだ」
あいつさえいなければすべてうまく行っていたに決まってる。ミア様の護衛が遅れたから? そんなのしょうがないだろ。こっちはあいつと決闘していたんだぞ! それに結果、助けたじゃねーか。
なのになんでこんな仕打ちを受けなくちゃいけないんだよ。あいつが消えてからダンジョンやクエストの達成率が落ちたのはわかる。だけどそれはすべて運が悪かっただけだろ。少しは寛大になれよ。
するとアレックスがこちらに来て
「なあオリバー」
「なんだよ」
「もしだけどよ。あいつが今まで俺たちのパーティに貢献していたとしたらどうする?」
「そんなことあるわけないだろ。ただ後ろでちょっとだけサポートしてただけだろ。それが貢献してたって言うのか?」
「そ、そうだけどよ。でも戦ってみたお前が一番わかってるんじゃないのかなって思ってさ?」
(...)
信じたくない。あいつが俺たちのパーティに貢献していた? そんなことあるはずない。あいつは都合の良い駒であったに過ぎない。あいつが居てくれたおかげで助けに行くのが遅れても俺たちが悪役にならなくて済んだのはわかっている。でもそれだけだ。そうに決まってる。
俺たちが話しているところにマリアも入ってくる。
「強かったのは事実よね。あそこまでオリバー様と戦えるとは思わなかったわ」
俺があいつと? そんなのあり得ない。少し気が緩んでいただけだ。だから負けそうになっただけだし、結果うやむやになって負けと言われたわけじゃない。幸いあんな姿をみんなに見られたわけじゃなかったからよかったけど。
「ちょっと調子が悪かっただけだ。それよりもマリアが助けなければあいつは!」
そうだ。マリアがあいつを助けなければ今頃あいつは死んでいたかもしれない。そうなれば支援だってもらえていたかもしれないのによ。
「しょうがないじゃない! あそこで助けなかったら全員にどんな顔で見られていたかわからないじゃない!」
「そんなの魔力切れですとか言い訳すれば良かっただろ」
すべてはあいつが悪い。あいつさえいなければ...。そんな会話をしている時、フードをかぶったおばあさんが話しかけてくる。
「ねえあんたら。困っているのかい?」
「話しかけてくんじゃねーよ」
「ちょっと! 勇者なんだからちゃんと自覚して対応しなさいよ」
マリアの言葉にイラっときた。
「は? お前俺に指図する気か?」
「違うけど...」
「まあまあ。そう怒らずに。もし力が欲しかったら力になれるかもしれんぞ?」
「それはあいつを見返せるだけのものか?」
「そうじゃ。どうじゃ?」
胡散臭い。でも今の俺はノアに勝つことしか頭になかったため、方法を尋ねた。
「あぁ。どんな方法なんだ?」
するとおばあさんは袋から黒色の指輪を出す。
「この指輪は己の感情を魔力に変換して増やせる代物じゃ」
「そんなものがあったのか!」
「お二人もどうじゃ?」
おばあさんがアレックスとマリアにも尋ねるが二人は首を振って断った。
「俺はもらうぞ」
そう言って俺は指輪を受け取る。その時おばあさんが何て言っているか聞こえなかった。
「これでお主も・・・」
そしておばあさんは去っていった。
「どの程度のなんだろうな」
「本当にそんなのつけて大丈夫なの?」
「タダでそんなものくれるバカがいるわけはない。俺も危ないものだと思うぞ」
こいつら何を言っているんだ? 力が手に入るんだぞ? それに俺は勇者。何かあっても大丈夫だろ。
「俺は勇者だぞ。大丈夫に決まってる」
「まあオリバーがそう言うなら止めないけどよ」
「うん」
その後、三日間指輪をつけたままあいつのことを考え、怒りを燃やしていていると、徐々に魔力が増えているのが分かった。そんな俺にアレックスとマリアが言う。
「支援ももらえなくなったじゃない? だったらもう一度ノアをパーティに加えたらいいんじゃない?」
「は? お前何言ってるんだ? 絶対に嫌だぞ」
「ちょっと考えてみてよ。今のノアはローリライ王国から支援をもらえている。それに加えて
言われてみれば...。
「でもあいつを追放するとき支援はもらえる約束はもらえたから用済みって言っちゃったぞ。それに俺たちの態度からしても戻ってくるとは...」
「それは大丈夫よ。全部水に流して戻って来いって言うわけじゃないわ。ルビア様の護衛をしつつ、時間に余裕があるときは私たちに力を貸してほしいと言えば。私たちは勇者パーティなのよ? 断れるはずないじゃない」
そうか。すべて無かったことにして戻って来いというから断る口実ができる。でも短時間だけパーティに加わってほしいといえばいいのか。するとアレックスが
「でもパーティに入ったらどういう対応するんだ?」
「今までは少し強く当たっちゃったから優しく対応をすればいいんじゃない? 誰でもきつく当たられた相手にやさしくされたら嬉しいものよ」
「それもそうか」
全員あいつをパーティに加えることに納得して王宮で待ち伏せする。
(仲間になったところで絶対に許さねーからな。便利な駒として骨の髄まで利用してやる)
そう思いながらあいつが王宮から出て来るのを待ち受けて話しかける。
「ノア。勇者パーティに戻ってこい」
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