11話 顔合わせ


 お茶会当日、まずは執事の皆さんたちと顔合わせをする。今回出席するのはルビアとエーディリ王国第一王女---オーラ・エーディリ様、公爵令嬢であるクララ・ロンドール、そしてゲストで1名が参加することになっている。ゲストについての詳細は言われていないけど、王族と公爵家がかかわっているお茶会だから危険な人物ではないだろう。


 お茶会の会場である王宮に入る。中はローリライ王国の王宮とあまり変わらず執事とメイドがたくさんいた。そのため近くにいる執事に伝える。


「ルビア・ローリライの執事として参りました。ノア・アリアブルです」


 するとメイドや執事の方々がお辞儀をして一人の執事が


「私、オーラ様の専属執事をしているリック・ドリロルと申します」


「宜しくお願いいたします」


 歩き方一つとっても欠点がない。これが王女の専属執事...。それに加えて俺を案内している時ですら周りをきちんと見て目で指示を出していた。


(すごいな)


 案内された部屋に入ると銀髪女性が一人座っていた。


「お初にお目にかかります。クララ・ロンドールの専属執事をさせていただいているエリン・ロスと言います」


「ローリライ王国第二王女、ルビア・ローリライの執事であるノア・アリアブルです。よろしくお願いいたします」


 エリンさんはリックさんと違い、優しそうな人。雰囲気から穏やかさがにじみ出ている。それなのに専属執事をしているってことは仕事に入るとスイッチが入るのかな?


「今日は宜しくお願いします。それにしてもあのルビア様に執事ができるとは思いませんでした」


「そ、そうなのですか?」


「はい。結構有名ですよ? ローリライ王国第二王女は執事や護衛を誰一人とらないと」


「そうなんですね...」


 知らなかった。ルビアが人を選ぶなんて...。ルビアのことだから誰でもいい。そう思っていた。でもそれならなんで俺が選ばれたんだ? 幼馴染だからか?


「それも男性と来ました! これは相当ノア様のことを信用しているのですね」


「そうだと嬉しいですね...」


 ここでルビアに信用されていますなんて自信満々に言えるはずない...。それにルビアは信用していると言ってくれたが、どれぐらい信用されているかもわからないし...。


「後、敬語はやめましょう。私たちはお互い同じ立場。それなのに敬語を使うと疲れてしまうじゃないですか」


「わかりました」


「わかりました、じゃないですよ? わかった、ですよ?」


 いきなりすぐ敬語を使うななんて言われても無理だろ! 


「わかった...」


「うんうん! よろしくね! あ、そうだ! ノアくん聞いてる?」


「何をですか?」


「また敬語になってるよ?」


「ごめん」


 しょうがないじゃん! それにしても何か知らないことでもあるのか? そう思っているところで、リックさんが部屋に入ってきたので話が中断される。


「では皆さん。今日のお茶会について話しましょう」


「「わかりました」」


 リックさんが仕切りながら話が始まる。


「今回のお茶会で最も大切なことはお嬢様方の交友を深めることです」


「うん」


「はい」


 そう。今回のお茶会はルビアと他のお嬢様方とで交友を深めることが重要なこと。もし今回のお茶会でルビアとオーラ様が喧嘩でもしてしまったら国際問題に発展する可能性も無いわけではない。それは公爵令嬢であるクララさんも同様だ。逆に全員の仲が良くなれば今後国同士で貿易などが行われる可能性もある。


 だから3人の仲をいかに深められるかが大切である。


「そこで私たちの役目はお嬢様が仲良くなるサポートです」


 するとエリンさんが


「リックくん。サポートといっても私たちがやることなんてなくない?」


「あるに決まってるだろ。もしお嬢様が他のお嬢様方にお茶を勧めた時、現物がなかったらどうする? 話がすぐ終わるだけだろ?」


「でもすぐ出せない時だってあるよ?」


「それを俺たちでカバーすればいいだろ? いつものことだ」


「了解! でもそれっていつもやっていることじゃない!」


「まあそうだけどな」


 あれ? リックさんとエリンさんは知り合いなのかな? なんかお互いがお互いを信用している。そんな感じがする。


(なんかいいな...)


 俺もこんな友人が欲しかった。すると突然話しかけられたことに驚く。


「ノアさんも大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫ですが...」


「ですが?」


「私は執事としてまだ1ヶ月と少ししかたっていないので至らない点が多いと思いますので、お二人の足を引っ張ってしまうかもしれません」


「あ~。それはしょうがないよ。それにしても1ヶ月で執事になれるなんてすごいね!」


「あ、ありがとうございます」


 執事の歴が短いと言っても二人の顔色が悪くならなかった。それが俺にとってどれだけ救われたことか。その後、全員で会場のチェック、非常事態の対処法などを話して解散した。少し気になって聞いてみたが、二人とも今回ゲストで来る人のことを知らなかった。


(誰なんだろう)


 そう思いつつ宿に戻ってルビアとお茶会に参加する準備を始めた。

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