12話 お茶会
「ノア! どのドレスが似合うかな?」
「水色がお似合いだと思います」
「わかった! じゃあ水色のドレスにする!」
するとすぐに部屋を出て水色のドレスを着替始める。
(俺が言ったのでいいのか? もっと他に意見とか聞かなくていいのか...?)
数分待ち、部屋にルビアが入ってくる。
(!?)
綺麗...。ただただその一言に尽きた。金髪にクリアな水色のドレスはとてもよく映えていた。何も言わずにルビアを見てしまった。
「ねえ。なんか言ってよ...。恥ずかしいんだけど...」
「に、似合っています。本当に綺麗です」
「あ、ありがとう」
ルビアの顔がみるみるうちに赤くなるのが分かる。でも俺も多分顔が赤いだろう。
「じゃあこれにしよっかな」
「はい。いいと思いますよ」
ドレスも決まったことなので次は俺の準備に入る。部屋を変えて、執事の方々と集合したときのように燕尾服を着てから髪を整え、ルビアがいる部屋に戻る。
「に、似合ってるよ?」
「ありがとうございます」
さすがにこの1ヶ月間毎日着ているから慣れたけど、そんなに顔を赤くして言わないでほしい。俺も恥ずかしくなるじゃないか。
「じゃあ会場に行こっか!」
「かしこまりました」
お互い着替えが終わったので会場に向かう。
(...)
それにしてもかわいい。いつもルビアのことは可愛いと思っている。でも今日は格段にかわいいと思った。ルビアのドレス姿なんて見たことがなかった。まあ当然だ。俺はもともと日に当たる存在じゃない。勇者パーティに招待されて初めてみんなに認知してもらえた存在。それなのに今になって見たらルビアの護衛兼執事だもんな。
(本当に何が起こるかわからない...)
昔の俺は現状を想像できただろうか。もしあの時誘ってもらえなかったら親父の後を継いで昔みたいに精神的に参っていたかもしれない。だからルビアには感謝しても仕切れない。
馬車に揺られて十数分、やっと王宮に到着して中に入る。
「ノアは今日1回きてるんだもんね?」
「はい」
「どうだった? 楽しかった?」
「楽しいかは分かりませんが、有意義な時間でした」
二人と話した時間は俺にとっていい経験になった。今までは家族や冒険者の人達と話すのが大半だったから、執事としてどんなことをした方がいいかなどいろいろと勉強になった。
「そっか! ノアがそう言うなら執事の人たちもいい人ばかりだったんだね。じゃあオーラ様やクララ様もいい人っぽそうだね」
「そうだと思います」
執事の印象一つで主人の印象が決まる。だからルビアも言っているのだろう。俺も二人に良い印象がついてたらいいな。
会場に入るとすでにオーラ様とリックさん、クララ様とエリンさんがいた。
「お久しぶりです。ルビア様」
「こちらこそお久しぶりです。オーラ様」
オーラ様とは隣国ということもあり、何回か顔を合わせたことがあると言っていた。すると
「お初にお目にかかります。エーディリ王国公爵家のクララ・ロンドールです」
「こちらこそお初にお目にかかります。ローリライ王国第二王女ルビア・ローリライです」
するとエリンさんが
「お初にお目にかかります。クララ様専属執事のエリン・ロスです」
「宜しくね。エリンさん」
「はい。よろしくお願いいたします」
二人の会話が終わったところで俺もクララ様に挨拶をする。
「お初にお目にかかります。ルビア様の執事であるノア・アリアブルです」
「ノアくんよろしくね。話は聞いているわ。まだ執事として1ヶ月なんでしょ? 頑張ってね」
「はい。よろしくお願いいたします」
この後、オーラ様にも挨拶を済ませてお茶会が始まるのを待つ。するとオーラ様が
「みんなに一応伝えたと思うのだけど、今日はゲストが来ます。もう部屋の前で待っているから入ってもらうわね」
話が終わるとと同時にゲストの方が入ってくる。
(なんでここに...)
「本日は招待いただきありがとうございます。
そこには
「後ろにいるのは本日雇った勇者---オリバー様御一行です」
「お初にお目にかかります。オリバー・ジョーです。このような場所に来させていただき光栄に思います」
オリバーが挨拶を終えて顔を上げる時、俺を睨んで来た。
(...)
その後、ルビアたち全員がミア様に挨拶を終えてお茶会が始まる。特に何もなく淡々と話が進んでいる時ミア様が言う。
「昨日私の馬車が襲われたのですが、一人の男性が助けてくれたのです。その人に一言お礼を言いたいのですが知っている方はいらっしゃいますか?」
「それは本当ですか? お体は大丈夫ですか?」
「はい。何人か死者が出てしまいましたが、私は大丈夫です」
「誠に申し訳ございません。主催した私がより警備を強化しておけば...」
「それはしょうがない事ですよ。いつだって襲われる可能性はあるのですから。それよりも助けてくれた方を知っている人はいらっしゃりますか?」
ミア様は俺の顔を見ながらそう言う。
(この人気づいている?)
ここで目立つわけにはいかない。俺が目立ってしまったらお茶会の意味がなくなってしまう。だからルビアに目で合図をする。するとルビアも首を縦に振る。
(わかってくれてよかった)
「多分私の執事であるノアだと思います!」
「やはりそうでしたか!」
あ...。終わった。その時、オリバーに睨まれていたのに気づくことができなかった。
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