9話 勇者視点2


「こいつとはノアのことを指しているのですか?」


「はい。こんな奴といても危ないだけじゃないですか」


「それはなぜですか? 特に危ない目になど遭っていませんよ?」


 するとオリバーがニヤッとしながら


「こいつは暗殺者なんですよ? それはルビア様もわかっておられますよね? だとしたらいつ命の危険に晒されてもおかしくないってことですよ」


(!?)


 こいつ...。別に暗殺者が全員悪いことをしているわけじゃないだろ! 普通の騎士たち同様に暗殺者だって冒険者になるし、その技術を悪いことに使っているわけじゃない。そりゃあ人や動物、魔物を殺す技に特化してはいる。だけどそれを人に向けて使っている人なんて全体の何パーセントいるとおもってるんだ!


「私はノアのことを信用しているので別に大丈夫ですのでお気遣いなく」


 ルビアの言葉にホッとした。


「一つ質問してもいいですか?」


「はい」


「ノアのことを護衛として雇ったというのは本当ですか?」


「はい」


 ルビアの答えに、オリバーは徐々に顔が険しくなっていく。


「それはなぜ?」


「私がこの人を信用できると思ったからです」


「それが暗殺者でも?」


「はい」


 するとオリバーは俺を睨みつけながら


「そうですか。絶対に俺が目を覚まさせてあげます」


 こいつは何を言っているんだ? 


「別に大丈夫ですよ?」


「いえ、絶対に助けますのでお待ちしていてください」


 そう言ってオリバーたちが去っていこうとした時、俺を睨みながら耳元で


「どんな手を使ったかわからないが、催眠魔法を使ってルビア様に近寄るなんて卑怯にもほどがあるぞ。絶対にお前の化けの皮をはがしてやる」


「...」


 そう言って俺たちのもとを去っていった。


「では戻ろっか。気にしなくて大丈夫だよ? 私はノアのことを信じてるから」


「ありがとうございます。ですが私もルビア様のことを信じていますので大丈夫です」


「そっか!」


 この後は特に何もなく1日が終わった。


(それにしてもオリバーは俺がルビアに催眠魔法をかけたと思っているのか? だからあんなに高圧的だったのか?)


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 今回、エーディリ王国で護衛のクエストを名指で受けたためエーディリ王国に向かうと、あいつと会ってしまった。なんでこいつがここにいるんだよ! そう思った瞬間、隣にローリライ王国の王女---ルビア様が立っていたことに気付く。


(あいつ、本当にルビア様の護衛をしていたのか? あんな奴が?)


 そう思った瞬間、ノアに対して怒りがこみあげてきて、思わず責めるようにルビア様に問いかけてしまった。それでもルビア様にはノアのことを信用しているとはっきり宣言された。


(なんでだよ? あいつは暗殺者だぞ? ルビア様の近くにもっといい人材がいただろ)


 今まで俺たちのパーティで貢献はしてくれたが、あいつは暗殺者であることを忘れちゃいけない。あいつがいる時点で命を狙われる可能性があるってことだ。それが暗殺者なんだから。それにしてもルビア様はなんであいつといるんだ? 


「ノアのことを護衛として雇ったのですか?」


 すると躊躇なく肯定された。


(は?)


 普通誰だって暗殺者と聞いたらそいつと関わることに迷いが出てくるはず。なのになんで迷いなく言えるんだよ。


(そうか)


 ノアに催眠魔法をかけられているんだ。だから迷いなく言えるんだよな。そうだ。だからあいつのことを護衛として雇ったんだ。


(助けてあげなくちゃ)


 俺は勇者。だったらルビア様も救わなくちゃいけない。そしてこの人もパーティに加えよう。そしたら今後催眠魔法をかけられる心配もなくなる。


 美しいルビア様があいつの近くにいるのはおかしい。おれが先に目をつけていたんだぞ? あいつにはそれなりの報いを受けてもらわなくちゃだよな?


 俺はノアにどうやって報いを受けさせるか考え始めた。

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