8話 勇者パーティとの遭遇


 馬車に戻ると不安そうな顔でルビアが待っていた。


「遅れて申し訳ございません」


「無事でよかった。大丈夫だった?」


「はい。魔物を一通り討伐してきましたので大丈夫だと思います」


「そっか」


 魔物の影で魔物を討伐してきた。でも影魔法をみんなに知られるわけにはいかない。それは今じゃない。少し外で匂いを消してから馬車を出してもらった。1時間ほどたったところで目的地であるエーディリ王国に到着した。


 エーディリ王国はローリライ王国と違い、自然豊かな街並になっていた。町の中に川が流れており、川の周りの家がカラフルであった。お茶会は明日なので今日は特にやることがない。すると


「ノア! 町を見てまわろ!」


「わかりました」


 ルビアと一緒に町の中を歩き始めた。本当なら護衛を数人つけなくてはいけないのだが、今回はルビアが一人でも行ってしまいそうな勢いであったため諦めて二人で回り始める。


「ねえねえ! あれ! すごくきれいじゃない?」


 ルビアが指していたのはキレイな湖。


(本当にきれいだ)


「はい」


 お互い湖に見とれてしまう。青がかった水に光の反射で木や山などが写しだされていた。


「こんな場所あっちじゃないもんね」


「はい」


「ねえ! 敬語止められないの?」


「仕事ですので」


「ふーん」


 ルビアが少し不機嫌になりながらも町の見学を続けた。屋台に行って串焼きを買って、噴水のある広場で食べ始めた。


「久々にこんなもの食べたな~」


「それはよかったです」


 本当はこんなものを食べさせちゃいけないのだが、昔のことを思い出すとどうしても止められなかった。よく昔は下町に出て串焼きなどを買って食べていた。その時のルビアはいつも満面の笑みで食べていた。


 串焼きを食べ終わったところで時間を確認する。


(もうこんな時間か)


 あっという間に1時間経っていた。これ以上戻るのに遅れるとみんなが心配して探しだすと思ったので


「帰りましょうか」


「え~。もうちょっとだけ?」


「ダメです」


「ケチ。じゃあ最後にもう一つだけ」


(まあ1カ所だけなら)


 ルビアの後をついていき冒険者ギルドに到着する。二つの塔の間に円形の建物が組み合わさっている外観をしていた。


「前はノアもここを利用していたんでしょ?」


「はい」


 ここのギルドは利用したことがないが、勇者パーティにいた時はよく冒険者ギルドを利用していた。ここのギルドや他の町にあるギルド、今まで行ったことのあるギルドすべてが派手であった。


(懐かしいな)


 あの頃は毎日のように冒険者ギルドに行ってみんなとクエストを受けていた。そのことを思い出すと楽しかった感情と追放された悲しい感情がこみ上げてくる。


「ノア大丈夫?」


「はい。大丈夫です」


 深く深呼吸をして気持ちの整理をする。


(よし)


「では宿に帰りましょうか」


「うん」


 冒険者ギルドも見たことだし、宿に帰ろうとした時


「それにしてもこのギルドはきれいだな」


「はい! 護衛の依頼を受けてよかったです」


(なんで...)


 なんであいつらがここにいる...? 


「ノア本当に大丈夫?」


「だ、大丈夫です」


 全身から血が引いていくのがわかり、俺の顔がみるみる真っ青になっていく。するとオリバーたち勇者パーティが俺とルビアのことに気付いて、笑みを浮かべながらこちらに近寄ってきた。


「ルビア様。お久しぶりです」


「はい..。えっとオリバー様でしたよね?」


 するとオリバーは笑いながら俺の顔を見ながら

 

「名前を憶えていただけて光栄です。それよりもこんな奴を連れて何をしているのですか?」


「ちょっと散歩ですよ」


「こんな奴とですか? こいつのことなんて放っておいて俺たちと回りませんか?」


(こいつ...)


 大切な人を奪っていくのか...。そう思ったら怒りが込み上げてきた。


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