第8話 母さんと俺 ラッドの真実
「おかえりなさい」
「「ただいま」」
家に入ると母さんが出迎えてくれた。母さんは父さんや俺と違い、魔法使いである。だから暗殺者のことをあまり知らない。だけど暗殺者だって魔法は使う。だから小さなころは父さんからは暗殺者の修業、母さんからは魔法の修業をさせられていた。子供の頃は3人で食事をとるのが当たり前だったのに、ここ最近3人で食事をとっていなかったので嬉しかった。
「ノアは何で家に? 勇者パーティはどうしたの?」
「...。クビになった」
「あら...。まあしょうがないわよね」
「う、うん...」
惨めすぎて本当のことが言えない。すると母さんが俺のもとにやってきて頭を撫でてきた。
「顔を見ればわかるわ。つらかったわね」
「あぁ...」
嗚咽を吐きながら泣く。母さんにやさしくされたことで今まで溜めこんでいた気持ちをすべて吐き出してしまった。ルビアの時と一緒の暖かさを感じた。数分立ってやっと涙が収まる。
「そう言う経験ができたって思えばいいんじゃない?」
「うん...」
「でも切り替えるのは難しいよね...」
「うん」
「だったら、その気持ちを糧にすればいいんじゃない?」
この気持ちを糧にする? どういう意味だ?
「ノアは今、勇者パーティみんなのことをどう思ってる? 私はノアじゃないからわからないわ。でも見捨てられてつらかったよね。だったらその気持ちを糧にして勇者パーティを見返しちゃいなさいよ! 俺はこんなに強かったんだぞ! パーティに必要な存在だったんだぞって!」
「...」
「そしたらパーティのみんなはどう思う? 抜けさせたことを後悔すると思うわ。そして多分、ノアのもとに戻ってくるわ」
「戻ってくる?」
なんで? 見捨てられたのに?
「そう。もう一度冒険をしないかって! その瞬間に俺はお前たちのもとには戻らないとかなんとかいえばいいんじゃない?」
「でも、そんなことしたら...」
一応は勇者パーティだ。世界を救うパーティ。その誘いに断るってことは...。
「私たちのことは気にしなくていいわ。だってあなたが苦しんでいるところを見るのが一番つらいわ。ノアは自分のことだけ考えればいいのよ? あなたはもう立派に頑張ってきたわよ? もう肩の荷を下ろしてもいいんじゃないかしら?」
「ありがと」
「いいえ」
本当に母さんにはかなわないな。ルビアみたいに俺を知ってくれている。俺を認めてくれている。だったらそんな人たちのために力を使っていきたい。俺と母さんの会話が終わったところで父さんが話し始める。
「ラッドくんの件だが、あの子は東南にある暗殺一家の生き残りだ」
「え? それに東南って...」
「そうだ。ラッドは生き残った王子だ」
「うそ...」
暗殺一家が王家だと聞いたことはあった。でも本当に実在していたなんて...。
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