第7話 手合わせ2


 お互い見つめ合う状態から手合わせが始まった。


(シュリより...)


 シュリより明らかに隙がない。さっきまでは素人同然だと思っていた。だけど少し違う。何かかじっていたか?


(実力が分からない以上少し本気を出すか)


 闇風コクイを使って周辺を真っ暗にしつつ殺気を消す。これを使うと大抵の戦士は動けなくなり戦闘不能になる。だけどラッドくんは違った。


 なぜか徐々に近づいてきた。


(なんでわかるんだ?)


 残り数メートルほどになったところで斬りかかってきた。


(あぶな)


 ギリギリのところでよける。俺の位置を正確にわかったうえで斬りかかってきた。ラッドくん...。何者なんだ? その後もことごとく俺に斬りかかってくる。


(普通じゃない)


 今まで何人もの人と手合わせをしてきた。だけどここまでやる人物はそういなかった。このままじゃやばい。流石にもう少し本気を出さなくちゃ倒すことができない。


 俺は隠密も使い気配を消す。するとラッドくんも見失ったように動きが止まった。黒い霧の状態で敵がどんな動きをしているか判断するレベルになったのは数年前。この状況では魔法を使うことができないため実力勝負になる。


 俺はラッドくんに近づき首元に短剣を突きつけようとする。その時、一瞬油断していた。それを見逃さなかったのか俺に短剣を横に振ってきた。体には当たらなかったが洋服が少し切れる。


 ここでやっと気づく。こいつはやばい。そう思い、縮地を使いすぐさま首元に短剣を突き付けて終わらせた。


「ま、参りました」


「うん...」


 ラッド...。本当に何者なんだ? この歳でこの動き。そうそうできるわけじゃない。


「坊ちゃま。どうでしたか?」


「...」


「坊ちゃま?」


 そこでやっと呼ばれていることに気付く。


「ごめん。シュリは暗殺者の基礎を練習しようね」


「はい。ありがとうございます!」


「それでラッドくんは...」


「はい」


 アドバイスをしていいのか? まだ仮契約状態でこの実力。もしかしたら俺たちの敵になる可能性もある。だから


「今度アドバイスするよ。ラッドくん。本当に強かったよ」


「ありがとうございます」


 アドバイスを言って立ち去ろうとした時、ラッドくんが少し不気味な笑みを浮かべていた。それにしてもラッド...。要注意人物だ。まあまずは明日だ。軽い運動もできたし親父でも待とうとおもったら後ろから話しかけられる。


「ノア」


「親父...」


 少しは追いついたと思った。でも親父が近づいている時ですら気づけなかった。それだけ実力差がある...。流石アリアブル家当主であり、国王護衛の一人だと実感した。


「訓練だが、ラッドくんと戦ってもらいたかったんだが、さっき戦っていたな」


「あぁ、ラッド。何者なんだ?」


「家に入ってから説明する」


「うん」


 親父が仮契約の人の名前を憶えているのが珍しい。それだけ強い人なんだとわかる。それに俺と戦わせたかったと言っている時点でラッドのことを少しは認めている証拠だった。


 ラッドの実力を見破れなかったのが不甲斐なくて恥ずかしくなった。

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