第18話 『和平協議』 その9


 暗闇の中から現れたのは、相当大きな体の、宇宙ゴキでした。


 それも、がっしりとした、黒のユニフォームに身を包んだ、高級将校と思われる、宇宙ごきでした。

 

 高貴な、と言うに相応しい雰囲気があります。


 明かに、ただものではなさそうでした。


 『わたしは、この度、ここの司令官を拝命した、ククカであります。ここにお招きしたのは、もちろん、訳あってのことです。あなた方の素性は、すでに承知しております。』


 『このゴキさんは、皇帝の腹心の、その直属の部下さんにゃんこ。』


 『ママ、顔見知り?』


 『にゃん。会うのは初めてにゃんこ。でも、宇宙ゴキ族では名高い一族にゃん。』


 『あなたのことも、よくわかっております。女王陛下。』


 『にゃん。』


 『それに、あなたさまは、ミタメクマ正統派王家の、王子様ですな。本来ならば。』


 『くま。それは、昔の話しくま。』


 『しかし、王家が復活するかもしれませんぞ。』


 『くまま?』


 『あなたは、地球人の囚人ですな。しかし、ほんごきが調べたところでは、濡れ衣であった可能性が非常に高い。特に、危険人物と言う経歴はない。攻撃性は低く、どちらかというと、苦情処理役にたつことが多かった。現役時代は、ですが。』


 じつに、流ちょうな地球標準語で話をするのです。


 宇宙ごきなまりが、まったくない感じがしました。


 『もちろん。そうです。ぼくは、何もしていない。いつもね。』


 『けっこうですな。さて、そこで、あなたがたにお願いがあります。』


 『あなたのような実力者が、なんのお願いがあるのですか?』


 『女王様と、あなたには、我々と、ミタメクマ族との和平の仲立ちになってほしいのです、是非とも。また王子様には、ぜひ、和平を求めていただきたい。』


 『なかだち?』


 『さよう。仲人のようなものですな。仲介役と申すべきかも。』


 『ふうん・・・・。にゃんこ。なぜ、にゃんこたちにゃん?』


 『いま、ここにおいて、あなた方がふさわしいと、ほんごきが判断するからです。』


 司令官は、きっぱりと、そう、断言したのです。



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