第16話 『和平協議』 その7


 ぼくたちのカーゴは、猛スピードで走りました。


 でも、止まらなくなったのです。


 『ママ、なんとかならないの?』


 『にゃんににゃんでも頼むにゃんこな。』


 みためくまさんは、操作卓を必死にいじくっていますが、まったく反応しません。


 『きみ、わかってやってる?』


 『まさかくま。』


 『だおね。ふぁあ・・・』


 地下通路は、大方、まっすぐですが、これはスピードを出すためには必要なことでしょう。


 でも、いくらか、カーブしてるところもありますが、ジエットコースターみたいに傾いたりはしません。


 『なんだか、ふっしぎな構造だなあ。遠心力なんか感じないなあ。』


 『ふうにゃ。にゃんかの仕組みがあるにゃんこ。』


 『なんですか。それは?』


 『さあにゃ。』


 そこで、ぼくは気が付きました。


 『あ、あ、あ、あ、あ。あそこ、分かれてるよ。』


 そうです。トンネル内のわずかな照明灯と、カーゴのヘッドライトに淡く照らされる彼方が、二股に分かれているようです。


 『こういうシーンは、映画ではよくありにゃんこ。で、片方は、大概、途中でなくなるにゃんこな。それか、壁になるか。大穴内に転落するかにゃん。』


 『やめてくらさい、縁起でもない。』


 『緊急ブレーキとかが、あって普通くま。さがしてくま。』


 『はいはい。』


 ぼくたちは、車内を見回しましたが、それらしきボタンもハンドルも見当たりません。


 『あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああ~~~~来たあ~~~』


 カーゴは、高速のまま、分岐点にさしかかりましたが、するりと左側のルートに進みました。


 『ふう・・・・・。これで、正解なのかしら?』


 『にゃんこお~~~~、さあにゃんこ。』


 『くま~~~~~~~~~~。』


 やがて、カーゴの左側には、壁がなくなり、どうやら、でっかい地底湖らしきが広がりました。


 つまり、右側は、崖のような感じです。


 もちろん、奥の方は見えないのですが。


 『こりゃあ。すごいなあ。』


 『にゃにゃにゃ。火山のおかげでできたものかにゃん。』


 『さああ~~~~~~。いかが?』


 『しらないくま。』


 ところが、なんと、カーゴの速度が、しだいに緩くなってきたのです。


 『遅くなってるにゃんこ。』


 『うん。減速してる。どんどん。なんだろう。駅かしらあ?』


 『また、テロリストくまかも。』


 『かんべんしてくらさいよお。』



 カーゴは、ついにゆっくりと進むようになり、やがて、ぴったりと停止しました。


 左側は、確かに湖です。


 静かな湖面のようです。


 物音ひとつしません。


 



   ************   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る