第15話 『和平協議』その6


 『これはね、大昔の、まだ宇宙ごきと、ミタメクマ族が、支配ー被支配じゃなくて、少なくとも約束上は対等だったころに、宇宙ごきが作った広大な地下高速路のなれの果てなんだ。ミタメクマは、あまり見た目にこだわらないから、化粧板も設置されていないが、換気排気装置とかは、いまの地球人にも作れないほどの優れたものなんだ。この地面も、でこぼこのように見えるが、実は規則的に計算されていて、浮上型車両に効率的にエネルギーを供給するみたいなんだ。ただ、さすがにメンテナンスがされなくなって、最近は調子が悪い。あそこは、当時の中間管制室とか、保線区のひとつだったらしいんだけど、まあ、簡単な操作はできるが、本来の機能はぼくらにはわからない。』


 『こっちは、工事用のトンネルですか?』


 『ううん。そういう面もあったらしいんだが、最近の調査では、どうやら宇宙ごき専用の通路だったみたいなんだ。実はそのころの、『弾丸列車』を見つけたんだ。壁の向こうに『隠し車庫』があってね、そこから発見した。』


 『今は、宇宙ゴキは使わないんですか?』


 『ああ。もう、これを使う時代じゃない。ミタメクマ族は、一定の地域に集住させられたし、いまは、制空権も宇宙ごきの独占だし。昔は、ミタメクマも、飛行機は持っていたんだが。で、じゃんじゃん! あれだ。もう、みな乗って待っている。こいつで村に、ま首都だけど、に、乗り込むんだ。いよいよさ。』


 『村のくまさんはどうするのです?』


 『彼らと戦争する気はないけど、ゴキどもを追放したら、我々を新政権に加えさせる。一定のポストも要求する。ぼくは、いらないけどね。地球に帰ろうと思うんだ、君もそうだろう?』


 『まあ、そうなんです。あの、武器は持ってるんすか?』


 『ある。何が起こるか分からないから。ただし、ミタメクマ族が引き継いでいた古い武器だ。普通ならゴキには通じないだろが、スパイからの報告では、ごきたちは、君たちのおかげで、ふにゃふにゃみたいだからなあ。ははははは。』


 すると、その輝くような『弾丸列車』と言われた、言葉通りに流線型で、かなり長く細い車両のデッキから、あの、でっかいくまさんの顔がのぞいたのです。


 『リーダー。急いでくださいくま。』


 『分かった。さあ、行こう。』



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