第13話 『和平協議』 その4


 早いと言っても、飛行パトカーのようなスピードは出ないのだと思います。


 それでも、せまい洞窟のなかですから、比べるものもない。


 それでも、かなり早いことは事実です。


 時速100キロとは、言いませんが、50キロよりは早いと思います。



 それにしても、焼き鳥おじさんは、どうなったのか。


 ものすごく、心配です。


 しかし、困ったことになっておりました。


 『止まらないくま。』


 『え〰️〰️〰️〰️!』『にゃ〰️〰️〰️〰️!』


 ぼくと、ねこママが一緒に叫びました。


 『ブレーキは?』


 『さっきからやってるくまけど、反応なしくまな。』


 『やはり、壊れたにゃん。』


 『壊されたのかな?』


 『あまり、そういう暇はなかったように思うくま。』

 

 どうするって、どうしますか。


 ぼくは、痛烈な後悔の念に襲われていました。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 焼き鳥おじさんは、洞窟の底に横たわっていました。


 生きているの?


 確かに、呼吸しています。


 目も開けています。


 じっと、天井あたりを見つめていました。


 溶岩が近づいています。


 はっきりと、音が聞こえ、熱気が迫っていました。


 焼き鳥おじさんは、やおら、立ち上がり、天井に手を伸ばしました。


 ぎりぎりですが、届きました。


 『なんか、これ、作り物っぽいなあ。換気口かしらん。む、熱くなってきたぞお。まだ、おいらには、地球で焼き鳥をするという夢がある。ここで、焼かれるわけにはゆかない。そら。ぐぐぐう…………ううあ。動かないなあ。くっそう、万事休す。走るか。溶岩と、競争だあ。


 おじさんは、軽く体操をして、走る体制に入りました。


 そ。そのときです。


 パカッ、と、天井が外れました。


 『あらま。』


 そうして、細いひも、が降りてきたのです。


 『何かわからないが。まさに蜘蛛の糸だ。』


 おじさんの体重を支えられるのか?


 やってみるしかないです。


 来ました、来ました。


 溶岩さんが、その恐ろしい姿を現したのですよ。


 たしかに、どんみりとした、溶けたアメみたいで、じっくり進みます。


 焼き鳥おじさんは、ひもに飛び付いて、上に上がり始めたのです。


 間一髪。


 溶岩の多分、最初の部分が足元にやって来ました。


 『あつつつ。あちち。のぼるぞう。見てろよ。』


  焼き鳥おじさんは、必死にヒモと格闘しながら、それでも、次第に、上のどこかに、上がっていったのです。


 くつは、煙を吹き出しそうになっています。


 『あちち。わあ。』


 くつに、火が入ったので、脱ぎ捨ててしまいました。


 落下した靴は、あっという間に、燃えました。


 焼き鳥おじさんは、しかし、頑張ったのです。


 ついに、トンネルの上側に上がったのでした。


 『やれやれ。助かったか? あれぇ、あんたたちは、テロリスト。』


 『テロリストではない。パルチザンだ。』


 『あ、そ。』


 『地球人、運が良かったな。』


 『ふははははは、ひひひひははははふふふ』


 そこにいた、テロリストみんなが、含み笑いをした。


 『ややこしい笑い方だな。』


 『助けられたんだ、ありがたく、礼くらい言うものだろう。』


 『あ、そりゃ、ども、ありがとう。』


 『ふん。まあ、いいさ。問題はこの先だからな。』


 この先に、何があるというのか?



    ・・・・・・・・・・・・・


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