第12話 『和平協議』 その3


 カーゴは、降りた時のまま、そこにありました。


 しかし、あの反体制派のミタメクマ族は、その姿が見えないのです。


 いったい、どこに消えたのか?


 『ぜんたい、あの、みためくまさんたちは、なんくまいたんだろか?』

 

 これは、ぼくです。


 『それは、とにかく逃げるにゃんこ。向こうが赤いにゃん。』


 ああ、そうです。


 長いトンネルの、ぼくたちがやって来た方向の先が赤色に染まっています。


 なんだか、熱気も伝わって来るようです。


 『溶岩だなあ。焼き鳥は出来るが、こちっも焼けるぜ。』


 『はやく、にげくま。』


 ぼくらは、再びカーゴに乗り込み、出発ボタンを、みためくまさんが押したのです。


 『あ、動いたにゃん。良かったにゃん。』


 確かに、動いたんです。


 でも、やたら、のんびりと。


 『こいつ、歩いた方が早いぞ。』


 焼き鳥おじさんが、いまいましそうに、言いました。


 『おかしいくま。可能なかぎりの高速走行モードになってるくま。システムがどこか壊れたかもくま。』


 『定員オーバーとか言わないでにゃんこな。』


 『それは、ないくま。でも、エネルギーがうまく伝わらないくま。』


 『あの連中、なにか細工したんじゃないの?』


 『さあくま、それは、中を見ないとだめくまけど、止まれないくま。さすがに。』


 『ちょっと、押してみるか?』


 焼き鳥おじさんは、そう言い終わる前にすでに降りていました。


 『ぼくも押す。』


 『だめだ。あんたは、地球に帰還しなくては。』


 『え~~~~。あなたもでしょう。』


 『おいらは、どのみち、宇宙ごきから狙われるんだ。凶悪犯罪者だからな。』


 『そんなあ~~~~~。』


 焼き鳥おじさんは、ぐいぐいとカーゴを押しました。


 実は、このカーゴは、少し空中に浮揚して動いていたのです。


 そこで、割合簡単に、押したら動くようなのでした。


 なんだか、ごーごー、という、不気味な音がますますせまって来るようです。


 赤い輝きも、かなり強くなりました。


 焼き鳥おじさんは、『おうぐわ~~~~~!!』


 と叫びながら、もっと強く押しました。


 『あ、エネルギーが来たくま』


 ダッシュボードの計器の橙色の光が、ぐんわっと、頂点に達しました。


 すると、カーゴは、狂ったように猛突進しはじめたのです。


 『うわあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~。』


 ぼくたちは、後ろに押しつけられました。


 重力の制御とかはしていないわけです。



 『お。じ。さ。ん。は~~~~~~?』

 

 『み・え・な・い・く・ま。』



 ぼくは、ふと、思ったのです。


 あの、反体制派のみためくまさんたちが、こうした乗り物に乗って、先に走っているのではないか?


 同じ速度なら、おいつかない。


 でも、もし、こっちが早かったら?


 考えるだけ、むだかもしれないです。


 


  🌋 ********************* 🌋




  みためくまさんの父親は、評議員会に合流しておりました。


  宇宙ゴキとの会議の内容は、実のところ、ちゃんと中継されておりました。


 『みなさん、どうするか。決めなくてはなりません。』


 父親くまさんは、そう呼び掛けました。


 うなずく、みためくまさんもいたのですが、じっと、腕組みしたままのくまさんもいます。


 評議委員長は、だまったままです。


 このくまさんは、なかなか、決断しないくまさんです。


 だから、委員長になっているのですから。


 お父さんは、自分の子供が、あの古代の高速空中浮揚型連絡網に入り込んでいると確信していました。


 あの連絡網は、もう、長く、使用禁止なのです。


 一種のタブーです。


 中間部には、恐ろしい、魔術を操る種族がいるとされており、彼らとの接触は、厳禁です。


 だから救援隊を派遣するなんて、言い出せない場所なのです。


 宇宙ごきの、新司令官は、助けを出してもいいぞ、というのですが、そこは、そのためには、こちらが良い返事をすることが前提であることは、言うまでもないでしょう。


 時間は、おそらく、ほとんどないと思われました。


 


   *******  🐻  🌋  🚃  *******

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る