第二編
1週間前、私はミミカから放課後に呼び出された。
呼び出された場所は、学校からそう遠くない、小さな神社だ。
その神社には不思議な都市伝説が「二つ」存在した。
その神社の入り口には小さな赤い箱が置かれている。
野ざらしに置かれたその箱は、神社への意見や要望を集める、いわば「目安箱」だ。
そして、その箱に自分の願いを書いた紙を入れると、近いうちにそれは叶う、と言われている。これが都市伝説の一つ目だ。
神社側もこの都市伝説の存在について把握しているようで、参拝者から「願いが叶うか」と聞かれたら、否定も肯定もしないようだ。
だが実際には、紙を入れた人すべての願いが全て叶うわけなどなく、その噂を信じる人は今は誰もいないだろう。
問題は二つ目の都市伝説だ。
それは、赤色の紙に名前を書いて箱の中に入れると、名前を書かれた人は呪われて、この世のものでない何かにつきまとわれ、そのまま命を落とす、というものだった。
そしてこの二つ目の都市伝説には続きがあった。
誰かの名前を書いて箱の中に入れた人物もまた、やがて自ら命を落とす、と言われていた。
人を呪わば穴二つ。
この二つ目の都市伝説は一つ目の都市伝説と比べ、知る人そのものがあまり多くはない。
理由は簡単で、一つ目の都市伝説と違い神社側が明確にこの噂を否定していたからだ。
また、「誰かを呪えば自分もまた呪われる」という話は怪談話やホラー映画で使い古されており、新鮮味がなかったことも広まらなかった要因になったのだろう。
都市伝説というものは、それまで聞いたことがない怪奇現象が起きるからこそ、人々の知りたいという興味と誰かに伝えたいという欲求に繋がるのだ。
どこかで聞いたことのあるような二番煎じのような話では、人々に鼻で笑われてそれで終わりなのである。
だからミミカも二つ目の噂を全く信じていなかった。
だが、彼女は私を呼び出した日、赤い紙を用意していた。
その紙に書かれていた名前はマミ。
ミミカは、こんな紙が見つかったらマミは学校に来れなくなる、とケラケラ笑いながら赤い箱に入れたのだ。
ミミカがそんな嫌がらせをした理由はとても単純だった。
ミミカは、自分と仲の良いグループでマミを虐めていたのだ。
いじめを見かねたクラスメイトの一人がマミを連れて担任の教師に相談をしたのだが、そのことはすぐにクラス中に広まってしまい、ミミカの耳にも入ることになった。
そしてミミカたちは報復と言わんばかりに、より陰湿にマミを追い詰め始めたのだ。
マミの異様な叫び声、行動、そして彼女の迎えた結末。
それらを目の当たりにしたミミカは呪いの存在が本物だと確信をした。
確信するだけの「説得力」がマミの言動にはあったのだ。
「あの呪いは本当だった……」
彼女は声にならない声をあげました。
「次に命を落とすのは……私なの……?」
ミミカは学校の廊下で泣き叫び、そして、一人、自分の家に逃げ帰った。
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