第1章: 名探偵と美少女と召使い
「刑事の方が何故…」
医師は目を丸くしていた。
かくいう俺も驚きを隠せなかった。
だが、医師や俺の様子とは裏腹に警察の二人は至って冷静だった。
さすがは警察。ましてや捜査一課の刑事といったところだろう。
二人組ということもあってか役割分担は予め決めていたようだった。
一人は話を聞き、もう一人は警察手帳を開いて何やらメモを取っている。
「まずはここまでの経緯を説明させていただきます。その際、こちらから質問をいくつかしますので、お答えください」
有無を言わせずといった空気が肌を通じてひしひしと伝わる。
淡々としてながらもどこか威圧感があった。
この空気感とこの刑事の物言いで、嫌でも察してしまう。
ああ、もしかしたら俺は…既に疑われているのかもしれないと。
「……待ってください。いきなり事情も言わずにこんな真似が許されるとお思いですか?」
俺の動揺に感づいたのか、医師は自ら警察とのやり取りの間に割って入ってくれた。
医師の心遣いに思わず胸を打たれた。
…これ以上、医師に迷惑をかけるわけにはいかない。
「…大丈夫です。質問があるというならお答えします」
「・・・ご理解が早くて何よりです。」
ここに来て、刑事はにっこりと微笑んた。
だがその目は明らかに笑っておらず、すぐに質疑応答という名の尋問が始まった。
「さて、先ずはここまでの経緯ですが…数時間に通報があったんですよ。あなたが住んでるお宅の方から酷い怒号と何が割れるような音を聞いたと。…それは間違いないですか?」
「そ、れは…」
いきなり容赦ない質問が飛び出てきた。
反射的につい口籠もってしまう。
「…どうなんですか?最初に言っておきますが、ご近所の方々から既に複数の証言を頂いてあります。下手に嘘をつかない方がよろしいとは思いますよ」
「う、嘘って…ち、違いますッ!!それは俺ではありません!!」
刑事は明らかに決め付けているような言い草だった。
まるで何か確証があるとでも言いたげだ。
俺は声を荒らげ断固として否定した。
けど、そんな必死な否定も刑事の耳には届かなかった。
それどころか刑事は俺にとどめの一撃と言わんばかりの言葉を吐いて来たのだ。
「……ですが、あなたの奥さまである真依子さんがそうおっしゃっているのですよ。夫である貴方に突き飛ばされた後、あろう事か娘さんの首を絞め殺害しようとしたとね…」
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