第1章: 名探偵と美少女と召使い
しばらくして救急車が到着し、真凛亜と真依子は救急搬送された。
真凛亜は意識が戻らないのか集中治療室に運ばれ、真依子も同様に処置室に運ばれた。
意外にも病院に来るまでの間は何事も無くこと事なきを得ることが出来た。
てっきり状況判断のため質問攻めになるだろうと思っていたが、急を要する事態だったこともあってか、軽く説明するだけに留まった。
説明と言っても本当に簡単なことで、あくまで俺が伝えたことといえば真衣子の頭の傷についてくらいだ。
本当ならもっと詳しい話をするべきだったかもしれない。
とはいえ救急隊員も受け入れ先の病院を探すのに手一杯だったんだ。
そもそも悠長に話せる余裕なんてものはまるでなかった。
それは病院に到着した際も変わらずで、俺はそのまま流れるように病院内にある待合室に通された。
*
それから数時間が経過して、真凛亜と真依子を担当した医師が俺の元へとやってきた。
「ご家族の方ですね」
現れたのは若い男性の医師だった。
顔を合わせた際に妙に神妙な面持ちだったことが、俺は気になった。
「…娘と妻の容体はどうなんですか」
すかさず医師に尋ねた。
ただならぬ雰囲気のせいだろうか、不安は募る一方だった。
「奥さまの容体は安定しています。頭に傷があったので縫合処置を施しました。今はまだ麻酔が効いているので良く眠っていますが、時期に目を覚ますでしょう。そして、娘さんの容体ですが…」
ここに来て、医師の顔付きが変わった。
先ほどまでの神妙な面持ちから一変して、酷く言いづらそうにしているのが見て取れる。
よっぽどのことなんだろうか。
ついつい身構えてしまう。
「・・・ひとまず、命に別状はありません。ただ、一つだけ問題があります」
「問題…?それはどういう意味ですか?」
「私の口から説明するより、まずは娘さんに直接お会いになってください。その方が…早くご理解いただけると思います」
命に別状がないと言いながら、問題があるという意味深な言葉を口にする医師。
当然俺はその理由を問いただした。
だが、いくら理由を聞いても話を濁すばかりで詳しいことは教えてはくれなかった。
医者としてこの態度はどうなんだと思ったが、俺はひとまず指示に従うことにした。
早々に真凛亜のいる病室に案内された後、医師は俺が中に入る前にこう言った。
「…くれぐれも取り乱さないように落ち着いて話を聞いてみてください」
はじめは言っている意味が分からなかった。
けど、病室に入って真凛亜を見た瞬間、俺は医師の発した言葉の意味を瞬時に理解する。
「・・・・・だれ?」
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