第1章:名探偵と美少女と召使い

 


「えと…、ホームズさん。電話でお話した…真凛亜(マリア)です」


「真凛亜ちゃん。…うん、電話で伺った通り時間ピッタリだ」



探偵は何食わぬ顔で少女と話していた。

電話で話した…ということは、やっぱりこの子もオレと同じように依頼人で間違いはなさそうだ。


だけど何でまたこんな女の子が探偵に依頼を?

…ついつい、珍しいモノを見るような目で少女を見てしまう。



「?あの…あなたは…?」



すると、少女は視線に気付いたのか不思議そうな顔でオレを見る。

その表情は少なからず怯えているようにも見えた。



「あ、えっと…オレは…っ」



やっぱりまじまじと見てしまったのがいけなかったのか。

…どうしよう、何て弁解すれば…。


オレが一人あたふたしていると横からクスクスと笑う声が聞こえた。

その声の持ち主は言わずもがな、この探偵だ。



「…ちょっとそこ、笑うところじゃないですよ。」


「いやだって…あまりにもおどおどしているものだから、つい…ッ」



だったら少しは助け船を出してくれてもいいだろうに…。


ほら、今度は少女の方がまじまじとオレを見ているじゃないか。



「あ、あのね、オレはその、怪しい人じゃないから安心してね?」



引きつった笑顔でオレがそう言うと、探偵がここぞとばかりに大笑いし始めた。



「あはははっありきたりの台詞だけど、それじゃあ余計に怪しいと思うよ」


「そう思うんなら、貴方からもちゃんと説明してくださいよ!」


「その必要はないさ。真凛亜ちゃん、この人は電話でも話した人だから心配しなくて大丈夫だよ」



探偵は少女に向けてこう話す。

かくいうオレは唖然とする。



「ちょっ…電話で話したってどういうことですか!?」



オレは探偵に対して啖呵を切るが、全くもって相手にされない。

そればかりか又もや楽しそうにクスクスと笑っている。


何がそんなにおかしいんだか…と、半ば呆れていると少女だけは妙に納得した素振りを見せてこう言った。





「あなたが、あのっホームズさんが言っていた召使いさんだったんですね!」


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