第10話 いつもの日常

「ほんっと、ケイがどうやって見つけたのか教えてもらいたいよ」

 藍染さんの家からの帰り道、健は感心しているような、どこかあきれてもいるような口調で切り出した。


「見つけたのは俺じゃなくて、藍染さん本人だよ」

 今回のことは偶然藍染さん本人が見つけたことにしておきたいんだよね。

もし僕が何かしたってことになったら、どうやって見つけたのか分からないからやばい奴認定を同級生からされる恐れがおるし…。

うっ、考えただけでも震えてきた。


 体を両手で包み込むようにしてガクガクと小刻みに震えている僕の態度を気にすることなく健はつづけた。

「それじゃあ、藍染さんが見つける直前に俺に送られてきた、何も聞かずに急いで家の外に出てくれっていう、ケイからのメールの意図は何なのかな?」

「あぁそれは、健の顔を見てるのが辛くなって外に出てもらっておこうという考えで」

「真面目な顔してそんな辛辣なこと言ってくるのはケイぐらいだよ…」

 へらっと即答したのがきいたのか、僕の気持ちを悟ってくれたのかは分からないけど、その後は今回の一件を追及してくることは無かった。




 家に帰ってベットに転がると、白がゆっくりと降りてきて僕のおなかの上に着地した。

「白ー、今回はありがと。白がいなかったら僕が手を下さずに解決するのは無理だったと思う」

 今回は白の力を借りまくりだったと自分でも思う。


 キーホルダーを見つけたのも白、ボールを転がしてキーホルダーのところまで誘導してくれたのも白。

 とまぁ、こんな風に今回は白の活躍あっての解決だったんだよね。だからこそ、相手にお礼を言われたときに罪悪感を少しだけ覚えてしまうんだけど…。

解決したのは僕じゃないよって言いたい、でも白は僕だけしか見えてないから人には言えないし…。


「ごめんねー白、いつも手柄横取りしちゃって」

 白は僕が何を言ってるのか分からないのか、キョトンとしていて、優しく頭を撫でると猫みたいに幸せそうな表情を浮かべた。

「でもまぁ、これで藍染さんからのお願いは完遂したわけだし。いつもの生活に戻れるよ」



 目を覚ますといつもの光景が見える。

浮遊する女の子が僕の顔を覗きこんでいて、カーテンを開けると日光がまぶしくて目を開けるのがつらく感じる。

「うーーん...っと、....学校行かなきゃ」


 日光を受けてゆっくりと伸びをするとなんだか気持ちがいい。....これが月曜日じゃなければもっとよかったんだけどね…。

日曜日は入学式からいろいろ立て込んでたからか、昼間までベットの上で過ごして、起きてからもゲームのログインとか動画を見たりとかするだけで我ながら無駄な時間を過ごしたと思う。



 学校に行っても藍染さんの探し物捜索の噂は、中学のときみたいに広がっていなかった。

本当に良かった、中学の時みたいに噂が広がると、探し物を頼まれることが多くなって毎日忙しすぎたから。


 安心していると、いつもの元気な声が聞こえて来た。

「ケーイー、おっはよう!」

 健は月曜日の朝とは思えない高めのテンションで絡んできた。

「??....どうしたケイ?そんな、驚いた顔して」

「いや、健って普通に挨拶できたんだっと思って」

「いやいや、そこは驚くポイントじゃないよね。てか、俺はいつも普通だし」

「全然普通じゃないよ。ほら、いつもは手をブンブン振ったりとか、後ろから手を回して捕まえてきたりとかしてさ」


 そう言われて健は少し考えこんでいたけど、やっぱり納得できないみたいで、「そんなことないと思うけどな」っと小さくぼやいていた。

こんな風に普通の高校生の生活を送れる思っていた僕は数日後、おかしな事件に巻き込まれていた。



「よし!それじゃあ、聞き込みだな、ケイ」

「ねえ、健。今回は僕、全然役に立たないと思うから帰っていいかな」

「探し物でケイに勝てる奴なんてこの学校にいないだろ。....絶対に見つけてやる」

「はぁー、帰りたい」

 まさか、藍染さんの件から数日でまたこんなことになるなんて…。

事件が起こったのは平凡な一日に思われた日の事だった。

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