第9話 見つけてほしい…
まさか、この声は!!
自分の考えが間違っていてほしいという気持ちで、後ろを振り返るとそこには元気よく走ってくる健がいた。
「健、念のために聞いておくけど、たまたま通りかかっただけだよね?」
「へっ?そんなわけないだろー。ケイが困ってそうだったから手伝いに来たんじゃないか!」
しまった。健に話したのが運の尽きだった。困ってるとか大変とかは健の耳にはフィルターで全部、手伝ってくれに聞こえてしまうことを忘れてた。
「うん?....ていうか、健は藍染さんの家を知ってたの?」
いくら、人脈が広くても、違うクラスのしかも同じ中学でもない女子生徒の家を知っているのはなんだか怖いんだけど…。
「いやいや、さすがにあんまり話したことのない女子の家を知ってたら怖いだろー」
その口調だと、あんまり話したことのない男子の家なら知ってるとか言いそうな口調なんだが…。
「今回は、彼に案内してもらったんだ」
健が後ろを振り返ると、見たことがない爽やかイケメンの男子が走ってきた。
「早いよー、近藤君」
「えっ?のり君」
そう男子に呼びかけたのは藍染さんだった。
「みーちゃん、探しもの手伝うよ!」
どうやら、見知らぬ男子と藍染さんは知り合いのようだった。
健の説明によれば、二人の関係は幼馴染で、藍染さんの家をのり君こと小島則助君に教えてもらったのだという。
「ケイが困ってるって言ってたから、手伝おうかなと思って昨日の放課後に、藍染さんに何か手伝えないかなって聞きに行ったら、明日一緒に探してもらうことになってるって教えてもらえたから、これはいかなきゃと思ってさ」
僕の知らないところで動いてたとは、健のやつ案外やりてなのかもしれない。
「それで、小島君とはどこで知り合ったんだよ」
「あぁそれは、クラスの女子に藍染さんと同じ中学だった人がいてその子に家を知らないかって聞いたら、小島君のことを教えてもらったんだよ」
「家の住所だけ教えてもらえばよかったんじゃないのか?わざわざ大変だったろうからさ」
「それは、僕の方からお願いさせてもらったんだ。みーちゃんが困ってること知らなくて。教えてもらって初めて知ったから
」
呼び方からも分かるけど、結構仲がよさそうなのに何で藍染さんは言わなかったのかな?....ていうか、さっきから俯いてるけど大丈夫だろうか?
藍染さんは小島君に何か言おうとしては止めている感じで、おどおどしていた。
それを見た小島君は優しく藍染さんの頭に手をのせて撫で始めた。
「みーちゃんが何を心配してるのか分からないけど、僕は怒ったりしないから、何でも言っていいんだよ」
藍染さんは小島君の言葉で安心したのか、「うん、うん」とだけ言って撫でられていた。
二人が見ていて和む雰囲気を醸し出して数分たち、藍染さんは小島君の反応を確認するようにゆっくり話し始めた。
「あの、あのね。今回、近藤君にお願いしたのは、小学生のときに二人で買ったキーホルダーなの。大事にするって言ったのにごめんね」
それを聞いて小島君はフフッと笑い始めた。
「みーちゃん、キーホルダーを失くしたことで僕が怒ると思って萎縮してたの?そんなことするわけないよ。今までずっと大事にしてくれてたのは知ってるんだからさ」
「なぁケイ。あの二人を見てたらさ、幼馴染っていいなぁって思うのと、俺たちはここにいていいんだろうかと思うんだが...どう思う?」
「うーん、とりあえず依頼された側の僕はいいとして、健はほんっと、この場にいてはいけないと思う」
僕は、小島君が撫でているのを見て自分もしてほしいと、ねだってきた白をどうにか膝の上に乗せることで落ち着かせながら健に思ったことを返した。
「いや、急に辛辣な感想だな。もうちょっとオブラートに包むとかそういうことをしてほしかったよ」
「うん?あぁ、ごめん。いま忙しくてさ。思ったことした言えなかった」
「その言葉が余計にささるんだけども…」
静かになった健を横目に、さすがにこのまま二人の空間を作られて、時間だけが過ぎるのも困るので本題に入ることにした。
「急で悪いんだけど小島君。ちょっとだけ手伝ってほしいことがあるんだよね」
「なになに、僕でよければなんでもするよ!」
これがイケメンと言うやつなのだろうか。この笑顔は確かに優しさに包まれるようでかっこいいと思ってしまう。
....いやいや、待て待て。
まったく、イケメンの笑顔にやられてしまうところだった。
「藍染さんが通った道は隈なく探したんだけど、どこにも見つからなかったから。僕の予想としては、この家のどこかにあると思うんだよね」
「あの、その可能性は結構低いと思うんだけど…」
藍染さんは率直な意見を述べた。
確かに藍染さんからすれば、家の中ではあったことを確認してるだろうからそう思うのも仕方ないとは思うんだけど、今回ばかりは折れてもらわなきゃ困るんだよね。どうしようかな…。
僕の反応を見てなのか、横から健が口をはさんだ。
「ケイの勘はいつも当たるんだよ。中学でも、ないと思ってた場所から発見されたりとかはよくあるし、まずはケイの勘に頼ってみるのもいいと思うよ」
藍染さんは少し複雑そうな表情を浮かべたけど、一応納得はしてくれたようでまずは家の中を探すことになった。
「それでケイ、どこを探せばいいんだ?」
「藍染さんは、家を出る前はあったことを確信してるみたいだから、一度家に戻ってきたときに落としてると考えるのがいいと思うんだよね」
「それなら玄関かもね。みーちゃんって、昔から靴を脱ぐときに慌てて、鞄の中身とか落とすこと時々あったし」
なんともありがたいご意見。玄関に意識がいってくれれば、扉の向こうにはキーホルダーがあるんだよね。
藍染さんも小島君の指摘は納得している様子で、四人で玄関を探すことにした。
さぁ、問題はここからだな。どうやって意識を外にむけさせようかな。
悩んでいるうちに、玄関の捜索も終わりかけてしまった。
「ここには、ないっぽいね。やっぱりみーちゃんの部屋なのかな?」
「うーん、でも私、自分の部屋は何度も探したよ」
このままだと、玄関の捜索が終わっちゃうな、何か手を打たなきゃ。
焦っている僕に健が話しかけて来た。
「なんかさ、中学時代を思い出すな」
「うん?何のこと?」
「あれだよ、ケイがバカップルを退治してくれた時みたいじゃないか、このシチュエーション」
確かにそうかも。今回もほとんどカップルの二人が目の前にいて、女の子の探しものをしてるからね。
健の意見に賛同していていると、ふと一つの案を思い付いた。
「たける、でかした!」
「うん?....えっと、俺、なんかした?」
健が僕に聞き返すのと同時に、ブーっと着信音がなりケータイを見た健はそのまま「ごめん」っと言って扉を開けて外に出た。
「近藤君急いでどうしたんだろう?」
「健は忙しい奴だから、友達から急に連絡が来たのかもね」
僕が小島君にそう返したとき、どこからかコロコロと小さいボールが転がってきて、健が開けて閉まろうとしている扉から外に出た。
「あ、ボールが!!」
藍染さんは扉の開けてボールが転がるのを追った。
「えっ!?あった、あったよ!!」
「どうしたの?みーちゃん?そんなに、大きな声出して?」
藍染さんの手にはボールと、キーホルダーがあった。
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