第2話 出会いは突然に
僕は中学生の時、あることで有名だった。
それは、探し物の捜索。いくら探しても見つからないもの、人に盗られたものなど自分ではどうしようもない探し物の捜索をよく頼まれた。
最初の頃は、人付き合いがいい健が一緒に探してくれと頼まれたものを一緒に探す程度だったのだが、あまりにも見つけるまでの時間が早いことで噂として広まっていき、気が付けば、健ではなく僕に協力を求める人たちが多くなっていた。
なので、同じ中学だった藍染さんがそのことで僕を訪ねてきていたのは分かっていた。
というか、他に理由が思いつかないしね。
中学の時には中二の途中から頼まれることが多くなって大変だったから出来れば高校では静かに暮らしていきたかったんだけど、直接頼まれたのを断るのは気が引けるしなぁ。
そんなことを考えていたので返事が遅れてしまった。
藍染さんが不安そうに僕を見つめていたので、安心させる目的で微笑みながら返事をした。
「高校ではあまり目立ちたくはないけど、僕の協力が少しでも役に立つなら協力しますよ」
僕の返事を聞いて藍染さんは緊張が解けたのか、ホッとした様子で、
「ありがとう」
っとだけ言った。
藍染さんの探し物はキーホルダーだった。
僕を屋上まで連れて行ったのは、そのキーホルダーが幼馴染と小さい頃に遊びに行って買った物らしく、高校生で持っているのはちょっと恥ずかしいのが理由らしい。
失くしたのは昨日買い物に出かけたときらしいのだが、家に帰って失くしていることに気づき、必死に回ったお店なども探したが見つからずどうしようもなくなり相談に来たとのことだった。
「でも正直、落とした場所の検討もつかないし見つからなくてもしょうがないのかもしれないよね…。私がもっと気をつけとけば…」
藍染さんは落ち込んでいるのか声が弱弱しくなっていった。
「たぶん、大丈夫だと思うので少しだけ待ってもらえますか?」
藍染さんは無理だと言われると思っていたのか、ひどく驚いた様子で、
「ほ、ほんとに見つかるの?」
気持ちが先走っているのか、藍染さんが距離を詰めてきたので身長差で真下から見上げてくるような形になりこっちが恥ずかしくなってしまった。
「ちょっ、ちょっと落ち着いてください!!」
俺は藍染さんの肩を掴んで距離を取った。
藍染さんも自分の行動に気づいたのか、顔が真っ赤になり頭から湯気が出ている。
「ご、ごご、ごめんなさい!」
「い、いえ大丈夫です。それだけ大切なものなんですね」
僕はそのまま藍染さんへの協力を約束して教室に戻った。
教室では健が待っていた。
「帰らずに一人で何してんの?まさか、初日から説教でも受けてた?」
「それはひどいだろー!せっかく待ってたんだからさー」
健は不服そうに口を尖らせて抗議した。
二人で帰りながら、健は藍染さんのことが気になっていたようで聞いてきた。
「藍染さんは告白だった?」
にやけながら言うので、どうしてやろうかとも思ったがいつもの事なので我慢した。
「中学時代の名残だった」
「ああーやっぱりそうか。お前も大変だよな。クラスのやつら告白じゃないかって騒いでたぞ」
はぁー、っと僕が深いため息をついたので、
「大丈夫だよ。あいつら同中だからなんか用事でもあったんじゃないかって言っといたから」
笑顔でサムズアップしてくるこいつもたまには良いことするんだなと納得していると、
「おまえ今、失礼なこと考えてなかったか?」
「全然、逆に褒めてたぐらいだよ」
僕は首を横にブンブン振りながら否定した。
「ほんとか~?」
そんな会話をしているうちに、健と別方向になる分かれ道に来たのでそのまま別れた。
家に帰って私服に着替えてから捜索を始めた。
捜索の方法は簡単で、朝目覚めるといつも目の前にいて、僕が出かけると必ずついてくるこの幽霊の女の子に質問をするだけだった。
「藍染さんが落としたっていうこの写真のキーホルダーの場所ってわかる?」
女の子はいつものように目をつむり、首を少しだけ傾け、右手で拳を握って顔を支えるようにして悩み始めた。
この女の子が現れたのは中学二年の夏だった。
学校の帰り道、暑さでぼーっとしていた僕は道端で座り込んでいる少女が気になり声をかけた。
「こんなところでどうしたの?」
「…」
見た目の年齢は小学二、三年生だったので、交番に連れていくべきか悩んだ。
「お兄さんと一緒に交番に行く?」
「…」
少女はただこっちをじっと見たままで何も言わないのでさすがにおかしいなと思ったときに、やっと幽霊だと気づいた。
僕は周りに誰もいなかったかを確認しながらその場を後にしたのだが、話しかけたのがまずかったのだろうか、幽霊の女の子はトテトテとずっと僕のあとをついて来た。
どうしたものかと思っていたが、女の子は特別何かをすることは無く、僕が本を読んでいると横に座って本の中をのぞき込んだり、勉強中に机の上に乗ってみたりするだけだった。
ただ、膝の上に座っているとは言っても重さを感じることは無く、今まで触れたことが無かったので分からなかったのだが、幽霊側にその気がなければ触ろうとしたときに手が通り抜けることはなかった。
この発見を世間に発表すれば大金持ちになれるのでは!っと思ったが、まず僕しか見えないので意味がないことに気づいて少し残念だった。
共働きで、ほとんど家にいることが無かった両親のもとで育ったためか、家に自分以外がいることに少しだけ違和感を覚えながら、なぜだかそれが少しうれしくもあった。
女の子にはこちらの声は届いているようなので名前を書いて貰おうと思ったりもしたが、物に触れることはやはり出来ないようだった。
自分からは物に干渉できないのか、干渉する気がないのかは分からないけど…。
しかし、名前がないのは不便なのでなんと呼ぼうかと思っていると、きれいな白髪とワンピースが目に入り、『
結局、他の名前も考えてみたものの、反応したのが『白』だけだったので、『白』と呼ぶことにした。
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