第24話 わたしの気持ち(胡跳)
「胡跳ちゃん、皆月君と一緒じゃなくてよかったの? 一緒に見るために来たんじゃないの?」
「何言ってるんですか先輩! 先輩たちとは今年で最後ですし思い出作りたかったんですよ!」
私は嘘を吐いた。
でも真っ黒な嘘じゃなくてマイルドな優しい嘘。先輩の言う通り私は皆月君と花火が見たかった。かと言って先輩達と見たくない訳じゃない。どちらかと言うと前者の気持ちが強いだけ。
私、浅川胡跳は皆月碧くんが好き。
中二の秋の大会で私は男子の試合を見に行っていた。二回戦で呆気なく負けちゃって暇してたとき、ずっと気になっていた他校の男子の試合があるとトーナメント表で知ったんだ。
その男の子はテニスが強くて、いつも準々決勝に進出するファンの多い子で、部員の子に連れられて見に行っていたうちに、いつしか私も彼のことが好きになってしまってた。
ある日の試合中、彼のラケットのフレームに当たったボールが飛んできて、コートの彼に投げ返したら、「ありがとう」と言って爽やかな笑みを返してくれたことは、今も鮮明に覚えてる。
恋に落ちるときは一瞬って聞くけど、こうも簡単に惚れちゃうなんて私ってほんとに単純だ。
それからは大会が楽しみになって部活が楽しくなった。彼は気付いてないぽかったけど大会ですれ違うだけでも嬉しくて、彼に好きになって貰えるように可愛くなるために頑張った。
彼の通っている中学校の生徒が多く進む進学校に私も受かるように勉強も私なりに頑張って、奇跡的に高一で同じクラスになれた日の夜は、ベッドのバネがバカになっちゃうくらいバタバタしたし、枕がびちゃびちゃになるまで泣き明かした。
彼は私を受け入れてくれて、学校生活で常に一緒にいられて夢のようだった。
でもついさっき、皆月君は私の知ってる女の子と一緒にいて、しかも付き合ってるって言ってた。不幸中の幸いってこういう場面に使われるのかな。
もし皆月君の彼女が知らない人だったら手を引いたかもしれない。
いや、きっとどんな子が彼の彼女だとしても私は諦めないだろう。
私は皆月君が好き。付き合いたい。ずっと一緒にいたい。だからどんな手段も厭わない。
姫岬さんも皆月君も覚悟しててよね、私は絶対諦めないから。
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