第25話 わたしの気持ち(珠璃)
「ちょっと外まで花火見てくるねお母さん」
「遠くに行ったらダメよ〜」
もうお母さんは心配性なんだから。八年前まで住んでたんだから大体覚えてるって。
でも八年振りだから自信はあまりないけど。
家の玄関を飛び出して、住宅街の道路を山を転けんばかりの勢いでひたすら下っていく。それからちょっと南へ歩くと、確か山とビルの間から花火が見えたはず。
やっぱりそうだ。
昔遊んだ記憶通りではなかったけど、山とマンションの間に小さな花火が見えた。
もう時間的にフィナーレかな。
シュパシュパと、湖から噴き出し花火の大きい版みたいな花火が上がってる。
花火なんて淀川とかUSJで飽きるほど見てきたのに、地元の花火は一味違う。それはきっと「あの子も同じ景色を見ているかな」と、淡い期待を抱いてしまうから。
八年前は何も伝えないまま急に引っ越しちゃってごめんなさい。あの時は変に気を遣ったり悲しんで欲しくないって気持ちからそうしたんだけど、今では凄く後悔してる。
一緒に遊んだ最後の日、おばあちゃんから逃げ出した近所の神社で言ってくれた言葉は間違いなく私を救ってくれた。
『運命には嬉しいことも楽しいこともあるから、心配しなくていいはずだよ』
『何が出来るかわからないけど俺に出来ることだったら』
あの言葉と笑顔がなければ、今この世界に月代珠璃はいなかったかも知れない。
重たい女でごめんね。引っ越した先で仲良くなった友達はいたけど、あお君と遊んだ記憶を上回ることはなかったよ。あお君は私のことを嫌いになって忘れてしまって、また再会しても、「だれ?」って聞かれるかもしれない。けど、私は何回だって感謝を伝えるから。
八年経ってあお君はどんな男の子になってるんだろう。
背も高くなって、超が付くイケメンになってるよね。
あまり想像はしたくないけど、彼女だっているかもしれない。
でもまた再開できた時には、前みたいに、前以上に仲良くしてくれると嬉しいかな。
やっぱりあお君、私には君しかいない。
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