実力を隠して廃嫡された双子の片割れは海を渡り本来の実力『無敵の絶対防御≪アブソリュート・シールド≫』を駆使して自由な人生を謳歌する!
第21話 新大陸の川には猫耳の生えた全裸の少女が流れてくることもある
第3章 褐色猫娘とエルフの追手
第21話 新大陸の川には猫耳の生えた全裸の少女が流れてくることもある
拠点づくりをはじめてから1カ月。
ゼノファリア王国を出たのが3月の雪解け後、それから新大陸までおよそ3カ月。
新大陸に移り住んで1カ月半くらいになるかな。
今は7月のはじめ、ゼノファリア王国では夏の季節。
冒険者が開拓しているこの新大陸の街アクシス周辺の地域は多少の雨はあっても、今のところ気候が安定していて、想定していたような雨季の被害というのは無かった。
無かった。
そう、今日までは。
「……なんだあれ?」
早朝、目覚ましに近くの川で水浴びをしていたところにそいつは突然現れた。
「人間の尻? いや……だけどあれ、猫の尻尾か?」
俺が浸かっているよりもやや上流の流木に引っかかっている褐色の尻。
そしてその尻の少し上からは猫の尻尾のようなものが生えて川の流れに揺らめいている。
「ってうつ伏せはまずいでしょ!」
尻尾の生えた尻に思わず呆然としてしまっていたが、尻が見えているということは顔が水に浸かってしまっているかもしれないということに気が付き、慌てて流れに逆らい水を掻き分ける。
朝から人死に――人かどうかはわからないが――なんて見たくはない。
「おいっ! しっかりしろ! 声は聞こえるか――ってうわ!」
慌てて抱き起して体を引っ繰り返すと、僅かに身に纏っていたらしい布切れが流木に引っかかって剥がれてしまい、仰向けになって露わになった大きな膨らみが視界に飛び込んでくる。
遠目からだったし、全裸だし女の子だとは思ってなかったなあ。
一瞬そんな思考が過ったけれど、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
顔色は少し青いし意識を失っているようだけれど、体を起こしたときに身体が僅かに震えたのがわかった。
まだ生きているなら助けないと!
急いで川から少女を引っ張り上げる。
「おい、起きろ!」
こういう時はどうすればいいんだったか……息は――してる。
心臓も動いているけれど、体がとても冷たくなってしまっている。
「そうだ、俺の服!」
水浴びをしていたので少女だけではなく俺も全裸だ。
すぐそばに脱いでいた服を慌てて取りに戻り、シャツで体を拭ってから残りの服を少女の体に掛ける。
その際に改めて少女の全身が目に入り、尻尾だけでなく頭の上から生えた猫耳や下腹部に描かれた封印の魔法陣に似た紋様が目に入ったが今は気にしている場合ではない。
「今、火を起こしてやるから死なないで待ってろよ」
それから急いで枝を拾い集め、少女の傍でフレイムの魔法を発動する。
「赤く猛るは契りの焔 怨嗟の呪縛を払い 天照す星火となれ! ――フレイム!」
拠点に移ってから魔法の練習をしていたおかげでフレイムの魔法は魔法陣を描かなくても詠唱だけで発動できるようになっていて良かった!
◇
「うっ……ここは……?」
「ようやく目が醒めたか……っくしゅん」
焚火の世話をしていると少女が目を覚まして周囲を見回しているので声を掛ける。
「っ! お前は誰にゃ!? なんで裸なのにゃ! お前! ミミに何をしたにゃ!」
ミミ――と名乗った少女は、焚火の傍で凍えながら蹲る俺に警戒心を露わに瞳孔を開く。
……それは俺が聞きたかったことなんだけどなあ。
「ミミ……でいいのか? 俺はセレスト、この近くに暮らしている人間だ。川で水浴びをしていたらそこの流木に引っ掛かってるあんたを見つけた。俺が裸なのはあんたが俺の服を布団にしているからで、何をしたかと言えば命を助けた。それだけだ。あと、お湯を沸かしたから飲んでおけ、体が温まる」
ミミの疑問に流木、ミミに被せた服、焚火の傍に置いた石の器を指差して答える。
器はアースウォールで無理矢理作った深めの丸皿。
もはや何がウォールなのか自分でもわからない。
「ミミが溺れてたにゃ? 確かに知らない服……お前と同じ匂いがするにゃ。でも、どうしてミミは川で溺れ――ミミの他には!? 他には誰も居なかったのかにゃ!?」
ひとつずつ状況を飲み込むように確認していたミミが突然声を上げて飛び起きる。
「流れ着いてきたのはあんただけだよ。他に誰も見ていない。それよりいきなり立ち上がるな、服を着るつもりがないなら返せ」
俺の服はミミの体に掛けていただけなので立ち上がればそれは必然、脱げ落ちる。
露わになるのは半乾きで艶めいた銀髪と猫耳に尻尾。
人間と同じ褐色の肢体に下腹部に刻まれた赤い封印紋。
「きゃ、きゃあー! こっちを見るにゃあー!!!!」
妙な喋り方をすると思えば、存外に可愛らしい悲鳴をあげる。
見た目の通りに俺とそう大差ない年齢の少女なのかな。
……それにしても、なんだか複雑な事情を持っていそうだ。
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