第2話 トーク

 Amiさんとマッチングしたが何を送れば良いのか俺は悩んでいた。


「とりあえず、『マッチングありがとうございます。』と」


 小声でそう呟く。


 既読しているのかどうかがわからないのがマッチングアプリのトーク画面だ。見てはいるが無視されている場合もありえる。どうか無視されないようにと願いを込めて送った。


 ただ文章を打っただけなのに疲労感があり、鉛のように体が重く感じられた。


 挨拶だけでこれだからデートに誘うなんてことが俺にできるのだろうか。いきなり不安になった。そもそもマッチングアプリで恋人なんてできるのだろうかと思っている自分もいた。


 バスに揺られて窓の外を眺める。早送りされていく景色は変わりない緑や住宅街だったがどこかいつもより彩度が高い気がした。


 マッチングアプリのアイコンに通知が1件届いた。すぐさま押すと先ほどのトーク画面が開かれる。


『こちらこそ、いいね。ありがとうございます!』


 そう書かれていた。簡潔だなとは思ったが最初はこんなものだろう。俺は次になんて送れば良いのか悩んだ。


 相手の趣味を知るためにプロフィール画面を眺める。趣味はカフェ巡りと映画鑑賞らしい。サブ写真にはカフェでの写真があることからも本当に好きなようだ。


『カフェお好きなんですね』


 ドキドキしながら当たり障りのない言葉を送った。


『そうなんですよ!カイトさんがカフェとか行かれますか?』


 やはり相手の趣味に踏み込むのは効果的だったようだ。サイトに書いてあった通りだと思った。


『カフェ行きますよ! 特にコーヒーが好きです』


『コーヒーはブラック派ですか?』


『ブラック派です』


『ブラック飲めるなんて凄いですね!』


 テンポよく会話ができてきた。これだよ、俺が求めていたのは。ただ、ここからどう誘えば良いのかということが一番難しいことをこの時の俺は知らなかった。


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