第14話 剣って主人公感あるよね?

「アリスさん! 起きて下さい! アリスさん!」


 翌日、愛斗は眠り姫の理由を身を以て体感していた。

 昨夜、アリスからは昼頃からまた訓練をすると言われていたので、朝目が覚めてから少し時間があると思い、町を散策していたのだが、そろそろ昼頃になると思ってアリスの元へと帰ってきたところ、まだアリスは夢の中だった。

 まだ昼では無いし、寝かせておこうと思ったのも、今となっては間違いなのかもしれないと思いながら、もう何度目かも分からなくなったがアリスを目覚めさせようと声を掛けていた。



 結局、アリスが目を覚ましたのは愛斗が声を掛け始めてから30分以上経った頃だった。


「…………おはよう」


「……おはようございます。って、言ってる傍から寝ないでください!」


 身体を起こして挨拶をしながらもまたゆっくりと横になろうとするアリスを止めながらも、ようやくアリスが目を覚ました。

 眠り姫だと言われる訳を体感しながら、まだ寝ぼけているアリスに声を掛けた。


「アリスさん、そろそろ起きないと、訓練する時間が無くなります! いい加減に動いて下さい!」


「……んー……」


 まだ寝そうなアリスを、このままでは本当に今日一日寝て過ごすことになりそうだと思って、アリスの両腕を掴んでベッドから引きずり出した。

 愛斗よりもかなり小柄なだけあって、かなり軽く、愛斗でも引っ張り出すことに成功した。

 ベッドから出てきてようやく目が覚めたのか、何度か瞼をぱちぱちとすると、口を開いた。


「……着替える」


 言いながら愛斗の存在を忘れていたのか、すぐに寝間着を脱ごうとするので、愛斗は慌ててアリスの身体を見ないようにしながら部屋から出るのだった。



 少しして、背を預けていた扉が開くと、昨日と同じ様な服装をしたアリスが部屋から出て来た。

 着替えながらまた寝ないかと少し心配だった愛斗は、ひとまず起きたことに安堵しつつ、宿から出るために歩き始めた。


 宿から出て、昨日の広場に向かいながら横を歩いていたアリスが話しかけて来た。


「……君、便利だね。……昼に起きれたの、久しぶり」


「……えっと、いつもはどれぐらいで起きてたんですか?」


「……日が傾いてくるぐらい?」


 あまりに遅い時間の起床に愛斗は絶句していた。


「……起きる時間が遅いから、依頼も面倒くさい奴しかないし、夜は獣も魔物も狂暴になるから危険な中動かないといけないから、大変。……だから、君がいる間は起こしてくれると嬉しい」


「……今日みたいな感じでいいなら、いいですよ。もっと早く起きたほうが良いと思いますしね」


「……ありがとう」


 話の流れで目覚ましの手伝いを頼まれることになった愛斗だったが、実際アリスに起きてもらわないと自分の訓練に付き添ってくれる人間もいなくなるので、二つ返事で請け負うことになった。




「……今日は、武器とかの練習。……魔法はひとまず使えることは分かったけれど、武器とか身体の動かし方を分かってから、戦闘スタイルを考えてどんな魔法を使えるようにした方がいいから」


 広場についてからアリスにそう言われて、愛斗はいろいろな武器を試していた。

 武器は冒険者ギルドで練習用に貸し出していたものを借りて、木剣、槍、斧、槌、弓など様々なものをひとまず思うように振るっていた。

 そんな中で、特に武器の心得も無いので当然上手く扱えるわけは無いのだが、特に斧と槌に関しては絶望的なほどに扱いが下手くそだった。

 武器の重心が先端に偏っているこの二つの武器は、愛斗の力では振り回されるのが精いっぱいで、斧に関しては刃がまっすぐ進むことすらない状況だった。


「……うん、君は力が無いから、あんまり重い武器は使えなさそうだね」


 様々な武器を振り回していた愛斗を、少し離れてみていたアリスはかわいそうなものを見る目でそう言った。


「……まともに使えそうだったのは剣ぐらいかな。……なんだか少し、動き方がおかしかった気もするけれど、一番まともに見えた」


「一応、ほんの少しだけ剣道をやったことがあるからですかね? って言っても授業で少しやったぐらいなので、素人に変わりは無いですけど」


「……剣道が何か知らないけど、使いやすそうな武器を使うといいよ」


 日本にいた頃、体育の授業で少しだけ剣道をやったことがあり、かじった程度ではあるもののどう動けばいいのかが分かっているので、愛斗は結局、剣を選ぶのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る