第9話 Aランク冒険者って……すげえええ!(俺では無かった(´;ω;`))

「……ついて来て」


 握手をした後、アリスはそのまま席を立って歩き始めた。

 ついてくるように言われたので、愛斗はアリスの歩く後ろを進むと、昨日も来た広場へと到着した。


「……今の実力を知りたいから、軽くかかって来て」


 広場に置いてあった木刀を愛斗に渡すと素手のまま愛斗と向き合った。

 しかし、流石に愛斗は師匠とはいえ丸腰の、見た目は可愛い少女に一方的に攻撃をするなんて出来ないと思い躊躇っていると、アリスは少し不機嫌そうな顔をすると、次の瞬間には愛斗の視界から消えていた。


「……え!? どこに……っ!?」


 目を離していなかったはずなのに気が付いたら視界のどこにもいなくなったアリスを探そうとしたところで、背後から背中を突かれた。


「……分かった? 君程度じゃ私を傷つけることなんて出来ない。だから、さっさと来て」


 ようやく自分がアリスのことを舐めてかかっていたと気付いた愛斗は、再度愛斗から距離を取ったアリスへと今度は油断なく突撃するのだった。




「……もういい。大体分かった」


 機能に引き続き、今日も愛斗はへとへとになっていた。

 昨日は、ほとんど躱されはしたもののなんとか追いつけている気もしていたが、アリスに関しては全く攻撃が当たる気がしなかった。

 愛斗の持つ剣がアリスに触れそうになる直前に、気が付くとアリスは愛斗の視界から消えるのだ。

 途中からは一度だけでも当ててやる、とむきになって剣を振り回していたが結局一度も当てることは出来ずに愛斗の体力が尽きてしまった。


「……そんな強いわけでもない、技術も無くただ闇雲に剣を振り回すだけ、突出した才能も無い。……平凡だね」


「ぐふっ……」


 そしてへとへとで全身満身創痍な状態で残酷な現実を告げられて愛斗は倒れ伏してしまった。


「そんなはあっきり言わなくても……」


「……しっかりと自分を見つめることも大事。……変に希望を持たせてさっさと死なれるなら、私が嫌われるだけで長生きできるならそれでいい」


 しかし、アリスの口調は冷たいものの話している内容はとても愛斗のことを気遣ってくれていて、本当は優しい人なんだな、と思えて愛斗は立ち上がれた。


「それにしても、アリスさん速すぎませんか? 何か魔法使ってたんですか?」


「……使ってた。けど、使わなくても避けれるぐらいの速さはある」


 立ち上がりつつ、あまりにも早かったので何かからくりがあったのではないかと愛斗は聞いてみると、アリスは魔法を使っていたことを否定しなかった。

 そして魔法を使わなくても避けれると言うと、また愛斗の視界から消えるように移動した、が、魔法を使っていた時よりは確かに遅くなっているようで、僅かに動いた、ということと、どちらに行ったのかぐらいは愛斗にも見えるようになっていた。

 そして、そちらの方向へと顔を向けると、無表情のままではあるもののどこか自慢げな様子で愛斗を見ていた。


「本当にすごく早いですね……。どれだけ頑張っても追いつける気がしないです……」


 少し落ち込みながら呟くとアリスは当然のこととでも言うように一枚の紙を見せて来た。

 その紙はどうやら愛斗も貰っていた、試験の結果の紙と同じで、数字の部分だけが変わっていた。

 その紙に書いてあった数字はそれぞれ、


 力…3

 速さ…9

 持久力…7

 魔力量…7

 魔門…6


 となっていた。


「……それは当然。……私と君じゃ速さが違いすぎる。……追いつくなんて素のままで出来るわけがない。……それに、仮にも私はAランクなのに、昨日冒険者になったばかりの子にしてやられるようじゃ師弟になれるわけない」


 自分の結果と比べてあまりにも高すぎるものを見て呆然としながらアリスの言葉を愛斗は聞いていた。


「……とりあえず、君のことは聞いてるから今日からしばらくはここで特訓する。……冒険者として仕事が出来るようになるのがいつになるのかは、君次第」


「分かりました……。これからよろしくお願いします!」


「……うん。……それじゃあ、私の部屋に行くから、荷物全部まとめて来て」


「分かり、ま、……ええ!?」


 アリスは言いたいことだけ言うといつの間にか歩き始めていたようで、驚いて変な声を上げる愛斗だけが、その場に取り残されるのだった。

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