第10話 師匠と同居…!?
「……とりあえず、座って」
愛斗は気が付いたら荷物を持ってアリスの部屋に入っていた。
何でこんなことになっているのか愛斗には分かっていなかったが、とりあえず人生で初めて、愛斗は女の子の部屋へと二人っきりで入っていた。
「……早く座って。……荷物はその辺に下ろしていいから」
中々立ったまま動こうとしない愛斗に焦れたのか、少しばかり低い声でもう一度座る用に言われて、愛斗はようやく荷物を床に置き、空いていた椅子に座った。
アリスは自分のベッド脇の物置の中で何か探しているのかしばらくゴソゴソしていたが、目的の物を見つけたのか身体を起こした。
「……ひとまず、しばらくはここが君の拠点になるから、くつろいで」
「は……い!? え、ここが拠点になるってどういうことですか!?」
アリスが何も無いような口調で言うので、愛斗も簡単に頷きそうになってしまったが、途中でおかしいことに気が付いて声を荒げた。
しかし、アリスはおかしいことなど無いといった表情のまま、口を開いた。
「……何かおかしい? ……師弟になるんだし、一緒に暮らした方が都合がいい。 ……それに、自立するだけのお金なんて無いでしょ? ……なら、どっちにしろこうするしかないと思うけど?」
「いや、それはそうですけど……。男女が同じ部屋で過ごすのは、その、どうかと思うんですけど……」
アリスの言葉に、納得できずに反論した愛斗だったが、続くアリスの言葉に黙らせられることになってしまった。
「……そんなこと気にしても、これから先冒険者としてやっていくうえであり得ることなんだから、気にしないようにした方がいい。……それに、君が私のことを襲おうとしたところで、返り討ちに出来るし」
……その通りではあるのだが、あっさりと言い切られてしまって少し、愛斗は落ち込んでしまった。
「……どうでもいい話はとりあえず終わり。……これから君の特訓をしていく」
話は変わって、アリスのその言葉を聞き、愛斗は頭を切り替えた。
「……まず、やらなければいけないのは魔法と武器を使えるようになること、そして体力。……魔法と武器が必要なのは、戦う時に攻撃手段が無ければ何も出来ないから当然のこと。……体力は、勝てない相手に遭遇した時に逃げるために必要。……体力に関しては、何かを教えることじゃないから、自分で走ったりして鍛えて。……武器と魔法が使えるようになったら、徐々にでいいから自分のスタイルを見つけるといい」
「? 自分のスタイルですか?」
「……そう、単純に武器と魔法を鍛えてもいいけれど、正直に言って君の能力じゃ大して強くはなれない。……だから、君の強みを生かすスタイル、君だけの武器を探すといい。……例えば、私なら自分の速さを活かして武器にしてる。……欠点はもちろんあるけれど」
つい愛斗は聞き返してしまったが、アリスはしっかりと愛斗に教えてくれた。
「……ひとまずは、魔法が使えるようにならないと考えることも出来ないだろうから、まだ考えなくてもいい。……魔法を使えるようになってからやればいい。……だから、まずはこれを読んで」
早速考えこもうとしていた愛斗の思考を遮ったのは、アリスの声と、そしてアリスが先ほど荷物の中から引っ張り出してきていた一冊の本だった。
既にかなり年季が入っているのかボロボロになっていたが、少しパラパラとめくってみると大量に文字が書かれていた。
「えっと、これは?」
「……魔法について書かれてる本。……まずは最低限の基礎ぐらいは分かってないと何も出来ないから、とりあえず読んでおいて。……私は少しでかけるから」
愛斗に魔法についての本を渡して、アリスは一人部屋から出ていくのだった。
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