第7話 冒険者とは…

 翌朝、いつの間にか眠っていた愛斗は冒険者ギルドの床で目を覚ました。

 人生初の飲酒と、床で眠っていたことで身体の至る所が痛んでいたが、ひとまず身体を起こすと、既に受付に立って仕事を始めていたマリーに話しかけに行った。


「マリーさん、おはようございます。……昨日、かなり飲んでたと思うんですけど、何でそんなに元気なんですか……」


 自分よりも遅くまで、それもペースを落とさずにのんでいたはずなのに、愛斗よりも早く起きているどころか既に元気な様子で仕事を始めているマリーに呆れていた。


「そりゃ、あの程度で潰れていたら危険なこともたくさんありますからね。安全に生きていくためには必須なんですよ。……それで、今日から冒険者として本格的に活動を始めると思うのですが、改めて詳しく、冒険者や仕事について説明していきますね」


 昨日は宴会になって話を聞くどころではなかったので、愛斗はようやく冒険者やギルドのシステムを改めて教えてもらうことになった。


「まず、ギルドに登録されている冒険者には、ランクというものが存在します。上から順に、SS、S、A、B、C、D、Eと、七つのランクに別れていて、依頼にも難易度として同じようにランク付けがされています。ちなみに、登録直後は一番下のランクから始まるので、アイトさんは現在Eランクとなってます。冒険者は、自分のランクと同じ、もしくは一つ上のランクのいくつかまで受けることが出来ますが、一つ上のランクとはいっても、難易度には幅がありますので、依頼を受ける際には気を付けて選ぶようにしてください。それと、依頼に失敗した場合はペナルティが発生することがあるので、気を付けて下さい。そして、それぞれのランクで依頼を一定以上の数を達成されますと、次のランクへの昇格が出来るようになります。ただ、これは強制ではないので、昇格せずにそのままのランクでいることも可能です。続いて、依頼に関してですが、通常の依頼と町や付近に住むものに危険が迫っている場合には緊急依頼として、その町にいるすべての冒険者には動いて貰うことがあります。こちらは原則として断ることが出来ませんが、その分依頼料は多くなるので、頑張ってください。それと、冒険者の方々、特にまだなったばかりの愛斗さんのような方は、最初はお金があまり無いと思います、そう言った方を助けるために、Eランクの方には冒険者ギルドの地下にある大部屋で過ごすことが出来るようになっております。もちろん大部屋で、中には人が多くいることもあるので嫌だった場合にはどこか宿をとってもらうことになりますが、ギルドには酒場もありますので、食事もすぐに出来るようになっております。武器も、あまり品質の良くないものになりますが、貸し出すことは可能となっております。……ここまでで質問はありますか?」


 長い説明ではあったが、これからは冒険者なのだから聞き漏らすことは出来ないと、愛斗は必死になって説明を聞くのだった。

 そして、特に質問は無かったので、首を振ってないことを示すとマリーは満足したように頷いて、再び口を開いた。


「良かったです、中には何度説明しても覚えてくれない人とかもいるので、アイトさんは真面目に聞いてくれて助かりました。それでは、最後の説明になるのですが、冒険者は基本的には自己責任にはなるのですが、最初からそう言われても分からないこともあったりして、知らずに何かしてしまう、といったようなことがあります。それに、魔法を使ったことの無いものからしたら、習うことも出来ずにいると後々大変になってくるのです。なので、冒険者には師弟制度がございます。まだ登録したばかりの人に対して、しばらくの間、冒険者についてのことだったり、依頼の取り方や、最低限の魔法の使い方などを教えてくれる人に一緒について行き、冒険者として成長するための制度です。……基本的には、知り合いなどで組むとやり易かったりするのですが、アイトさんは渡りモノという事でこちらに知り合いなんていないですよね? なので、ギルドの方で師となってくれる方を見つけておきました。今日の昼時にギルドに来てくれるそうなので、それまで待っていただけますか?」


「えっと、その時間に戻ってきたらいいんですか? それまで町を見に行ったりしてもいいですかね?」


 まだ起きたばかりで、前日は夜遅くまで騒いでいたとはいえ、早くに目が覚めてしまったのか、お昼時、太陽が中天へと辿り着くまではかなりの時間がありそうだった。

 なので、愛斗はまだしばらく時間があると判断し、町を散策することにするのだった。

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