第2話 新しい世界、女神様付き。

「次に話すのは、報酬についてです。勝手に私たちが代理として連れてきておいて、何も無いのは恥知らずだという事で、それぞれの女神から自分が呼び出したものに対して何かを与えることになっています。これは、それぞれの女神にちなむようなものになっているので、貴方が選ぶことは出来ないのですが、グローニアでの生活が楽になるような力ではあると思いますので、それを使って頑張ってきてください。そして、最後に最も優れた勇者に対して、十二柱の女神が力を合わせて何でも一つ、願を叶えます。これは女神全員が承諾しているので、反故にすることもありません。ここまでで質問はありますか?」


 フローリアの力になることを決めた愛斗だったが、それからもまだ話が続いていて、頭が混乱してきていたのをフローリアは気が付いたのか一度質問の時間にしてくれた。

 愛斗はここまで聞いてきたことを改めて思い出しながら、気になることを聞くことにした。


「女神さまから貰える力ってのは、俺はどんな力が貰えるんですか? 小説みたいに、無双できるような力を貰えるんですか?」


「そこまで期待されても困りますけどね……。簡単には死なないように少し頑丈な身体と、私からは、戦う上では全く役に立ちはしないのですが、他者からほんの少し、好かれやすくなります。地球で言うような、所謂チートが出来るような力は、自身の訓練次第といったところです。さて、そろそろ説明も終わる、と言いますか、貴方がここに居られる時間も無くなってきましたが、何か最後に質問はありますか?」


「じゃあ、女神様と、フローリア様と付き合うためにはどうしたらいいですか?」


 諦めきれなかった愛斗の告白じみた質問にも、もはやフローリアも慣れてきたのかあまり赤面することなく説明してくれた。


「そもそもの話、人間と神では関係を持つことは出来ません。神と契れるのは同じ神のみです。なので、私と契ろうとするならば愛斗も神とならなければなりません。神になるには、十二柱の女神から出される試練を全て達成し、許可を得なくてはなりません。これまでの歴史で、神になろうとした者もいましたが、当然ながらそこまで易しいものではなく、神に成ったものはいません。なので、無理せず私のことは気にせずにあちらの世界で楽しく生きて下さい」


 フローリアの話を聞き終わった段階で、愛斗の身体は薄くなり出していた。


「そろそろ、時間ですね。お願いをしている身分で何を、といった感じですが、どうか、ご無事で」


「分かりました、行ってきます! また、お話しましょうね! 絶対に諦めませんから!」


 そして、愛斗がそう叫んだところで、愛斗の姿はその空間から消え失せて、グローニアへと転移していくのだった。






 次に愛斗が目を開いた時、そこは森の中だった。


「いきなり町とかじゃないんだ……。それに、この恰好は一体?」


 気が付いた愛斗はひとまず自分の状態を確認しようと自分の恰好を見て、先程まで着ていたはずの高校の制服ではなく、何故か革製の鎧と、腰に下げた剣を見てひとり呟いた。


『その恰好は、そちらの世界で変に思われないように変化させてもらいました。それと、いきなり町ではなかったのは、いきなり人が現れて周囲の人に驚かれないようにするためです』


 すると、誰もいないと思って呟いた言葉に返事があって愛斗は辺りを見渡した。

 しかし、すぐにその声の主が誰か分かった。


「フローリア様!? どこにいるんですか!?」


 声の主は、つい先ほどまで一緒にいて話をしていたフローリアだった。

 すぐにどこにいるのか、と辺りを見渡す愛斗に、再び声が聞こえて来た。


『私は自分の領域から出ていないですよ。これはまだそちらの世界のことについて分かっていないだろう貴方たちに対してのサポートと言いますか、しばらくの間、日に一度だけ話すことが出来るのですよ。先ほどは少し、説明しきれなかったこともあるので目を覚ましたら教えておこうと思い、今回は話しかけました』


「つまり、一日一回限定のフローリア様とお話出来るってことですね!?」


『……間違ってはいないですけど、目的は貴方にそちらの世界のことを教えたりすることですからね? それと、あまりそちらの世界に影響を与えるわけにもいかないので、ほんの少しではありますが、懐にそちらの世界の硬貨を入れておきました。少なくとも数日は生活できると思うので、なんとか頑張ってみてください。……それでは、あまり長い時間話していると他の女神からバレてしまうので、今日はこの辺りで。……最寄りの町は、ここから太陽の方向へと進めばたどり着けるはずです。それでは』


「あっ……。もう少し話していたかった……」


 フローリアはそれだけ伝えるとそれ以上愛斗の言葉に反応はしなくなってしまった。

 少し寂しい気持ちになりつつも、これからも話す機会があることに喜んで、愛斗は太陽の出ている方向を確認し、歩き始めるのだった。

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