第29話 Sランク

「ふざけた戯言をほざくなよ! 貴様の方こそさっさと手を離せ! 我の妹をどうしようと我の勝手だろうが! 貴様が口を出すことか!」


「テメェのその妹を犠牲にするような性根が死ぬほど気に入らねぇんだよ!」


「ゥ、ッ……! チギれ……!」


 ワーム状の触手に身体を飲み込まれる寸前の妹の異星人をオウレンは引っ張りだそうと、異星人は飲み込もうとするため、可哀想なことに綱引きの綱状態になってる訳だ。


「おい兄貴っ! 何をそんなに意地はってんだよ! 敵同士の仲間割れに首突っ込む必要ないだろ!? どうせどっちも倒すんだから勝手にやらせておけばいいじゃねぇか……!」


 心配で居ても立っても居られない様子のエーテルは箒を杖代わりに歩みより、オウレンにそう言い放つ。

 異星人の吸引する力の方がオウレンの引っ張る力よりも強いのか、さっきよりも妹の異星人の身体は徐々にだが飲み込まれていっている。

 このままではオウレンまで一緒に飲まれてしまいそうな懸念を感じさせたのだ。


「分かって無ぇなぁエーテル。そんな理屈はどうでもいい。ただやりたいようにやらなくちゃ、せっかく鍛えた意味が無ぇ。だから俺は、自己満足を押し通したいんだよ」


 そのオウレンの声には自分の決断に変更は無いという、断固たる意思が宿っているようだった。

 それにはエーテルもそれ以上何も言えなかった。


「ッ……お兄ちゃんの馬鹿……」


 エーテルは誰にも聞こえないくらいの震えた小声で呟いた。







 と、そんな様子を見守ることしか出来ない僕とカオリン、それとアティナだ。


「二人ともあんなに引っ張って取り合うぐらいにあの子が欲しいのなら仲良く半分個すればいいのに」


「は?」


 こっちまで戻ってきていたアティナが今の光景を見て何をどう解釈したのか、そんな意味不明なことを言い出した。


「半分……? え、どゆこと?」


 それに説明を求める僕。


「この間読んだ恋愛漫画でね、ヒロインを好きな男の子二人が一日毎にヒロインと付き合うって内容があったのよ」


「半分って、時間のことかい……」


 ていうか恋愛漫画と一緒にするなよ。

 あの殺伐とした状況のどこに恋愛要素があるんだ。


「ていうかアティナ、お前恋愛漫画とか読むんだ。いつもギャグかバトルものばかりだったのに」


「カオリンから借りたの。知らなかったけどカオリンったら結構な恋する乙女よね」


「い、いえ、あれはたまたま買った本がそうだっただけで……それより二人とも、こんな状況に緊張感無さすぎです!」


 何故か少し頬を赤らめたカオリンが話を逸らすように注意してきた。

 別に恥ずかしがることないと思うけどな。








「ッ、馬鹿が……! なら貴様ごとまとめて吸収して終いにしてくれるっ!」


 異星人がそう吠えると次の瞬間、死んだように止まっていた他の触手群が動きだす。

 鞭のように叩いたり、巻きついて締め上げたりと、オウレンへ攻撃を開始した。

 言う通り、ワーム状の触手にオウレンもろとも飲み込む腹らしい。


「くそっ……あの、死に損ない!」


 エーテルは異星人に憎悪を向け、今度こそ仕留めるべく魔法を放とうと箒を向ける。

 しかしエーテルの魔力も体力も底をついてる。

 箒が折れそうなほど握りしめてもそんな身体では魔法の発動もままならない様子だ。


「……エーテル! 魔力切れなのに無理に使うな! 命を削っちまうぜ……!」


「ッ……! だって……!」


 オウレンに言われ、悔しさからか拳を震わせるエーテル。

 身体に魔力が無い時に無理矢理に魔法を使おうとすると、自らの生命力を魔力に変換して使うことになるため、下手すると命を落としかねない。

 オウレンが止めようとするのはもっともだった。

 ただエーテルの黙って見てられない気持ちだって強く伝わるものがあるだろう。


「……お前……もうイイから……早く離セ……お前モ死ぬぞ……何故助けル……? 何故そこマデ拘ル……?」


 それは弱々しく自分の運命を受け入れたことを悟らせるような声音だった。

 妹の異星人はこの後に及んで自分が助かろうとは思ってないのか、或いは兄の為に贄になることを選んだのか、オウレンに手を離すよう促す言葉をかける。

 しかし。


「……女の子が目の前で死ぬのが許せなかったからだ」


 オウレンが攻撃をその身に受けながらも口にしたのは、誰もが分かるそんな一分一厘も反論の余地も無いようなシンプルな答えだった。

 理由を知った妹の異星人がそれを聞いて何を感じたかは分からない。


「……馬鹿ダナ、お前……」


 ただ最期にそう言った。


「あ」


 妹の異星人は自分の触手をオウレンが掴んでいる方の自分の腕に巻き付け、圧迫して千切るようにして切断した。

 それに従い支えが無くなった身体は、そのまま吸い込まれ飲まれていった。


「なん……だよ……」


 唖然とするオウレン。

 その手に残った血の滴る腕は、直ぐにカラカラに枯れて砂になり落ちていった。


「……少しだけ。我としたことが少しだけだが不安に思ったぞ。妹が変な気を起こして貴様なんぞの助けに甘んずるのではないかとな……!」


 そう言う吸収を終えた異星人の損傷した肉体は、大量のエネルギーを蓄えたおかげだろう、みるみるにうちに再生していく。

 そして僅か数秒の間に、今まで与えたダメージが見る影もなく回復を果たしていた。


「ふっ、ははははは! 何かごちゃごちゃと話していたようだが、今となってはくだらぬことだ! 余計な真似をしてくれたが結局無駄だったな! あれは我の為に生まれ、我の為に死ぬ運命だったのだからな!」


 身体をエネルギーに漲らせ、高笑いする異星人。

 その前でオウレンは砂となった腕を握りしめ項垂れていた。


「また……やっちまったな……触手を切るなり奴本体を叩くなりすればよかったのに……頭の回らない男だぜ……俺って……」


「兄貴……おい兄貴! しっかりしろって! 来るぞ!」


 オウレンに迫る異星人。

 エーテルは消沈する懸命に呼びかけるが、うわ言のようにものを言うオウレンからは反応がない。

 そんなほぼ無防備な姿勢のオウレンの隙を異星人は攻撃のチャンスと巨大な拳を振り上げた。


「何をめげることがあるのか我には理解不能だが、そんなにショックなら貴様の息の根から止めて同じところに送ってくれーーーー!」


「『グングニル・ブラッド・クロス』!」


 だが叩き潰そうと拳を振り下ろす寸前。

 回復して調子づいた異星人の顔に、赤い魔力に覆われた聖槍が飛ばされた。






 瞬間、オウレンに向け手を振り上げごちゃごちゃ言っていた異星人の言葉を遮るよう顔面にグングニルが直撃。

 小さい爆弾でも爆発したかのような炸裂音と衝撃が広がる。

 そのおかげで異星人を怯ませ、攻撃を阻止出来た。


「命中! せっかく治ったところ悪いけどまた顔面崩壊して貰ったわ」


「エグいことするなぁ……」


 だがナイスだ。

 おかげで異星人の野郎の足止めになった。

 流石に見てるだけではまずい状況になったと判断した僕とアティナ。

 アティナに異星人を攻撃して貰い、その内に僕が満身創痍のエーテルを避難させる分担だ。


「エーテル、今が神のくれたチャンスだ。早いとこ逃げちまおう」


「な……ま、待てクズゴミ……!」


 駆け寄った僕がエーテルに肩を貸して移動させようとすると、オウレンのことが気になるのかここから動かまいと抵抗してきた。

 しかしこの状況で待つ訳もない僕。


「いいからとりあえずカオリンのところまで離れるぞ。そんな状態じゃ何も出来ないだろ」


 まだ動けないカオリンはひとまず瓦礫の山の影に移動させておいた。

 役に立てなくてすいませんとか嘆いていたけど、だったらそんな重い鎧着るなよといった感じだ。


「……くそ、うるせーよ」


 口では悪態をつくエーテル。

 だが流石に撤退するべきだと思ったのか、それとも力が残っていないのか、ぐたっとしてしまってるが素直に歩き始める。

 満身創痍の状態で無ければ小突かれてるところかもしれなかったから助かった。


「ちっ……また貴様らか。丁度いい、まとめて惨殺してくれる!」


「あれ……? 何かさっきよりも頑丈になってない?」


 アティナは驚きつつ少したじろぐ様子だった。

 見ると異星人はグングニルが直撃したのにも関わらず、傷一つ付かない無傷の状態でいたのだ。


 マジか。

 いくらアティナに消耗があっていつもの威力が無かったとはいえ、あれを喰らってノーダメってことあるか?

 もしかしてさっきの吸収の影響で回復前よりも強くなってしまったのだろうか。

 だとするとかなりやばいのでは……。


 そんな敵のまさかのパワーアップに僕が軽くない絶望を思い爆ぜてると、


「おい、俺の息の根から止めるんじゃなかったのか」


 震えるほどの殺気を放つ異星人の巨大な肉体。

 その目の前に、いつの間にか一切の恐れの様子も無く立ち塞がったオウレンの姿があった。

 ついさっきまで俯いていたのは嘘みたいに吹っ切ったのか、完全なる臨戦態勢と言わんばかりに拳を鳴らしている。


「ああ、そうだったな」


 対する異星人。

 そう言うが早いか。

 今度こそ強大なエネルギーを込めた巨腕を振るった剛拳を繰り出した。

 その威力は言うまでもないだろう。

 見ただけで伝わるレベルで死を直感させる。





 その直後、轟音が鳴った。


「え?」


 そして気がつけば。

 拳を振ったはずの異星人の方が突如としてバラバラの肉片となって飛び散り、この世を去ってしまっていた。

 一瞬のことで何が起こったか全然見えなかった僕。

 実は異星人の中に爆弾が仕込まれていて突然爆発でもしたのかと思ったが、エーテルが答えを教えてくれた。


「『疾風迅雷拳ジオ・ブレイク』だ。完全にカウンターで決まったんだろう……跡形も残って無ぇ、ザマァないぜ」


 簡単にエーテルの説明してくれた話によると、どうも今の惨状はその『疾風迅雷拳ジオ・ブレイク』たるオウレンの技が炸裂した結果らしい。

 そして次の瞬間には大きな風船が割れたような爆音と落雷の時のような光とともに異星人が断末魔をあげる間もなくミンチになった訳だ。

 要するに肉眼で捕らえられないほどのスピードで殴ったというかことか。

 側から見れば突然異星人が破裂したようにしか見えない光景だった。

 流石はSランク、鉄拳一つにしても次元が違う。

 もしあれが自分に向けられと考えたら恐ろしすぎて失禁するかもしれない。

 オウレンが敵じゃなくて本当によかった。

 これからも敵に回さない様に気をつけようと僕は心に固く誓うことにする。


「……お前のような奴が辿る末路ってのは、相場が決まってるもんだぜ……」


「貴、様もっ! 同じ……末路を……辿って……! 死ねぃ!」


 だが信じられないことに、あの状態でも異星人はまだ口をきいていた。

 心臓部といった部分だろうか、ドクドクと激しく脈動する臓器のような見た目の小さい生き物が地面で跳ねている。

 もしかするとあれが異星人の本体なのかもしれないが、あんな姿ではこれ以上何も出来やしないだろう。

 そう僕は思ったが、それは間違いだったと直ぐに気付かされる。


「往生際の悪い野郎だ……」


 オウレンが言った。

 あの生き物の表面が光り始めてきて周りの地面が焼けるほどに熱を放出している様は、誰がどう見てもこれから爆発しますといった雰囲気を漂わせている。

 どうやら異星人は最期の最後に自爆して僕らを道連れにするつもりらしい。


「やばい、死ぬ」


 それにはついそんなことを口走る僕。

 せっかく倒したのかと期待した直後にこれだ。

 救いってものがまるでない。

 あれがどれだけの規模の爆発になるのか知らないが僕たちのいる位置は巻き込む程はあると見積もっていいだろう。

 何とか逃げる算段を考えるが、正直なところ何とかなるビジョンがまるで浮かばない。

 いや、逃げない方法ならあるのだが問題があって実行は難しい。

 くっ、多分もう爆発まで猶予は無さそうだし、やっぱり『オーバー・ザ・ワールド』に頼るしか……!


 今日一番で脳が働いている僕がここまでの思考に使ったのは二秒程だが、一秒後には爆発してるかもしれないと考えるともたもたしてられない。

 今のコンディションで発動出来るが微妙だが、一か八か『オーバー・ザ・ワールド』を発動させようと決断した刹那。



「『黄金雷球グレート・スパーク』……!」



 そんな僕よりも早く、オウレンが魔法を発動した。

 現れたのは放電する黄金色の大雷球。

 その雷球はますます光が強くなっていく爆発寸前であろう生き物を包み込む。


 そして、直後それは爆音と共に弾けた。


 爆炎と爆風、衝撃が生まれ、それらを抑え込む雷球内の空間で滝壺の水中のように荒れ狂う。

 それでも尚辺りに襲う強烈な衝撃波と凄まじい熱の暴風雨。

 幾度となく反復する重い振動が大気を揺らす。

 もしも何も無しで爆破してたのならば、この街全体を吹き飛ばしていてもおかしくないと思わせる実感がある程だった。





「……ブハァ、苦しかった……。エーテル、大丈夫か?」


「あ、ああ、不思議と何ともねぇ」


 爆風が収まり、何とか身を起こす。

 『ベネフィット・スターズ』第二、第三の能力で僕とエーテルをガードしてたから被害はない。

 熱風や瓦礫の礫に晒されて息が出来なかったけど、身体は無傷でいられたのだ。

 アティナは『アイギス』で防御してるだろうから大丈夫か。

 カオリンが瓦礫の山の影に居たはずとはいえ、少し心配だったが『アイズ・オブ・ヘブン』で確認した感じでは生き埋めにもなってないし怪我もなさそうだ。

 それより多分一番やばいのは……。


「兄貴っ……!」


 一番被害を受けたのは爆心地であの爆発を抑え込んでくれたオウレンだろう。

 直ぐに駆け寄ると、黒くすす焦げた火傷に血塗れになったオウレンの姿があった。


「うぅ……兄貴、その出血はまずいって……! 早く……早く治療しないと……」


「ゲホゴホ……ふぅ、何を狼狽えてんだ。俺なら平気だ……ぜ……」


 そう言ってオウレンはもはや涙ぐんでるエーテルの頭をポンポンっと撫でてるが、どう見ても大丈夫じゃない程の重症に見える。

 こういう時、本人よりも周りの方が心配するものだ。

 と、次の瞬間、案の定。


「ただ……少し……寝る……」


 振り絞って言ったあと、オウレンは糸が切れたようにバタンっと倒れた。


「う、うわぁぁ!? お兄ちゃゃゃん!?」


「オ、オウレンさん! やべぇ!? 死んだか!?」


「死んでない!」


「グブッ!?」


 慌てすぎて僕がいるのにお兄ちゃん呼びするほどの状態のエーテルを前に滅多なことは言うもんじゃなかった。

 的確に顎を撫でるフックを喰らう羽目になってしまう。


「ねえみんなー! 大丈夫ー? 生きてるのー?」


「無事ですかー?」


 脳が揺れ、軽い目眩を覚えていると、そこにアティナとアティナにズルズルと引きずられたまだ鎧の重量で身動き出来ないカオリンがやってきた。

 引きずらないで鎧脱がしてやれよと思ったが、まあとにかく二人は無事だったらしくてよかった。


「ちょ!? エーテルのお兄さん大丈夫なの!? 滅茶苦茶血が出て……あれ? でも出血がだんだん止まっていってるわね。傷も塞がっていってるような……?」


「っ!」


 血を司る女神だから気付いたことなのか、一目見てそう言うアティナ。

 そう聞くや否や、エーテルは意識が無いオウレンの身体を弄り傷を見始めた。

 確かにアティナの言う通り、血は止まってるようだし、火傷の傷もじわじわと小さくなって治っていってる。


「ほ、本当だぜ……兄貴、どこでこんな……」


「脈は乱れてるけど心臓はしっかり鼓動してるから死んじゃいないわよ。でも早くお医者さんに行かないとね」 


 アティナの言葉に完全に不安が拭えた訳では無いにしろ、ひとまず安堵する様子のエーテル。

 やっぱり血に関することはアティナが言うと説得力あるような気がするな。

 ちなみにカオリンは血だるまのオウレンを見て顔を青くしていた。


「よかった……元々戦えるようなコンディションじゃ無ぇのに無理するから……。ありがとな、アティナ」


「私は何も。ていうかお礼を言うのはこっちの方よ。みんな助けて貰ったじゃない」


「その通りです。オウレンさんが爆発を抑えてくれたのですよね。それがなかったら今頃どうなってたことか……」


 少なくとも街が吹っ飛んでたかもしれない。

 それを考えると本当に感謝だな。

 今思えば、あの場を僕やアティナの力で凌ぎ切るのは無理だったような気がしてならない。


「本当だよ。マジで助かった。色々と凄いよなオウレンさん。流石Sランクだ」


 最終的に強くなった異星人もワンパンで仕留めるし、もう僕たちが居なくてもオウレン一人で大丈夫だったんじゃないか。

 あれ、もしそれならワンチャン僕の家は助かってのではないかと頭をよぎったが……まあ今更そんなことは言うまい。


「当たり前だぜ、あたしの兄貴だからな……」


 帽子を深く被って顔を隠しながらエーテルは頷いた。

 どんな表情してたんだろうかと言うと、きっと誇らしげな笑顔だったんじゃないだろうか。


「はぁ……」


 思わずため息が出てしまう僕。

 人生を振り返って見ても今日程酷い目に遭った日は無い。

 何度死の淵に立たされたことか。

 でもそれもとにかく何とか異星人が倒れたことで終結だろう。

 無傷とはいかなかったが、命は助かった訳で……。


「……? なんか急に暗くなった?」


 そう軽く安堵していると、突然辺りが夜のように暗くなった。

 周りの火の手が光源になっていてまるで見えないということはないが、この異変に僕は再び嫌な予感を覚える。


「あれ……上の、でっかいやつ……」


 アティナがそう呟く。

 正直忘れかけていたが、この街全体を覆うほどの巨大物体がまだ上空に存在していた。

 確か異星人たちが乗ってきた宇宙船とか言っていたっけ。

 日の明かりを宇宙船が遮断しているが、その宇宙船自体が明かりを灯っていたため、街はそこまで暗くなってはいなかったのだ。


 その明かりが今消えた。

 そのせいで急に暗くなったようだ。

 しかしどういう仕組みであんなでかいのが浮いてるか知らないけど、異星人がいなくなった今どうやってあれをどかせばいいだろう。


 そう、半ば他人事のように僕は宇宙船については楽観視していた。

 しかし、次の災難はもう始まっていたのだ。




「……なあ、あの宇宙船とやら、段々と落ちて来てねぇか?」


 

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