あっしの家と萩組
〜家のこととそれから〜
夜中になると俺の家の周りが賑やかになる。部屋の窓から外を見下ろすと、今日もヤクザたちが騒いでる。外では父さんが奴らに頭を下げているのが見えた。
「またか……」
今日も眠れないことが確定し、掛け布団を頭から被った。できるだけ外の音が聞こえてこないように……。この状況いつまで続くんだろう。誰か助けてくれないかな……。
※※
土曜日の昼、リビングで親父がパソコン越しに仕事をしている。話している相手は誰だろう。背景がどこかのオフィスっぽいけど。
「獅斗さん、先日はありがとうございました。獅龍組からのタレコミと皆さんのおかげで、ヤクザの取引現場を押さえることができました。報酬も振り込みましたので、ご確認をお願いいたします」
「アタシの部下が優秀だからですよ。また戦力が必要なときは、おっしゃってくださいね」
「ありがとうございます。またお互いに助け合いましょう。何卒よろしくお願いいたします」
「土曜日なのに仕事?」
「もう済んだけどな」
この機会にみんなに、家のことを紹介しようかな。あっしの家は
いくら悪いことをしていないからとはいえ、ヤクザを怖がってしまうカタギも中にはいる。小学生の頃がそうだった。あの事件が起きてから、あっしに近づいてきてくれる人はいなかったから……。今思い出すだけでも悲しくなる。だから、中学では目立たないように頑張るんだ。
※※
「獅斗様、獅恩様。今大丈夫ですか?」
「ああ。どうした?」
「お二人に紹介したい人がいまして。連れてきていいですか?」
「もちろん。じゃあ茶でも用意するか。獅恩頼むわ」
「うん」
ケトルでお湯を沸かしているとき、マコトと一緒に若そうな男の人がやってきた。マコトと同じくらいの身長で、鍛えているのか体格もガッシリしている。近くで見ると迫力あるなぁ……。お茶の準備を終えてテーブルに並べていった。
「それじゃあ紹介しますね。こちらは警視庁の
警視庁?何で刑事さんがここに?頭の中で疑問が浮かんでいた。舘川さんはスーツの
「初めましてこの度、獅龍組専属チームに配属されました舘川と申します。何卒よろしくお願いいたします」
「獅龍組専属チーム?」
あっしは初めて聞いた言葉だった。警察とは協力関係にあるって昔聞いたことがあったけど……。
「獅恩大丈夫か?話についてこれてるか?」
親父に心の中を読まれた気分……。あっしは無言で頭を横に振った。
「獅龍組専属チームってどんなチームなの?」
舘川さんが紙袋を取り出して包装をベリベリ剥がした。
「長くなるので、お菓子でもつまんで聞いてください」
あっしは出されたお菓子に手を伸ばして食べながら話を聞いた。
続く。
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