大・異世界転生(前編)
最近流行りのものといえば異世界転生
と言われ続けて結構立つが、俺はそれでも異世界転生に憧れた。
なぜなら現実はつまらないことこの上ないからである。
退屈でパッとしないかつ、俺の身に何一つどでかいイベントが起こらない。
世界を救うことになったり、突然可愛い女の子とドキドキの同棲生活を送ることになったり、身の回りに殺人事件が起きたり、
俺が求めているのはそんな非日常の世界なのだ。
こんなに求めているのにも関わらず、世の中は平和そのものだった。
最近のイベントといえば、地元の花火大会とか、家族で焼肉を食ったぐらい。
…
楽しいは楽しかったけどさあ
違うんだよなあ
だから俺は異世界転生をする。
家族や友達と離れ離れになるのは寂しいが、俺には夢とロマンと女の子が待っているのだ。
さようなら、みんな!
俺…世界と女の子を救わなくちゃいけないからさ…
最後に家族に別れを言うことにした。
まずはリビングにいたお母さんに勇気を振り絞って、思いを伝えた。
「ああそう、で?何時に帰ってくるの?」
「違うって!もう帰ってこないんだってば!」
「晩御飯どうするの?食べてくるの?」
「別の世界行くから、いらないんだって!」
「食べてくるんだったら、はい飯代」
「異世界に行ったら日本円なんてつかえないよ!もう行くから!」
「はーい。いってらっしゃい」
お母さんは息子がいなくなる悲しさで現実から目を背けているらしい。
気持ちはわかるけど。
お父さんにもお別れを言っておこう。
「お父さん、俺しばらく行ってくるから」
「うーーす」
お父さんは俺の方なんか見ずに、野球中継にかじりついていた。
もう知るか
後で後悔しても知らないんだからな
俺は家を後にした。
さあてどうやって異世界転生しようか
転生する主人公は常に勢いで行動するものだ。
異世界転生といえばやはり、
トラックに轢かれるのが定番、もはや風物詩。
轢かれてなんぼである。
よし、トラック轢かれ作戦実行だ!
と思って横断歩道にやってきたが、
怖い。それに轢かれたら絶対痛い。痛いのは絶対無理。
俺がビビッている間に、後ろから小学生二人が俺を追い抜いて、
横断歩道を颯爽と走り抜けてしまった。
気持ちいいくらいの走りっぷりだったな
俺にもあんな頃があったんだろうか
そう考えるとノスタルジックな気持ちになってきた。
このままだと異世界転生できなさそうだったので、横断歩道から離れることにした。
他に方法がないか、友達である短曾我部くんにアドバイスをもらうべく、電話を掛けた。
短曾我部くんはライトノベルの知識に深く、特に異世界転生については尋常ならざる熱を持つ人だった。
先月、学校の校舎ごと異世界転生するべく校舎を囲むようにして魔方陣を描いた
学校魔方陣事件を起こし、一週間の停学と2000字の反省文を書くほどの猛者である。
「おや、松寺氏からかけてくるなんで珍しいでやんすね」
「短曾我部くんにききたいことがあってさ、異世界転生する方法なんだけど」
「おわー!!松寺氏もとうとう異世界転生する決心はついたでやんすね!
となると、魔方陣の用意をしなければでやんすねえ。今度はしくじったりしない でやんすよ!」
「校舎ごとじゃないってば、僕だけでいいよ。」
「個人だったら簡単でやんす。区役所に届け出を出せばいいでやんす。」
「........え?」
「あれ?知らなかったでやんすか?最近は異世界転生する人が多いから、役所で手続きする程度でできちゃうでやんすよ。」
うかつだった。
こっち側も異世界だったとは。
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