第四章 動き出す歯車④
三国はミトがおびえていることに気づいていた.自分の父親が死の危険にさらされていることを知ったからだ.父親が行方不明になっても,居場所は不明ということではなかったので,少し安心していたのかもしれないが,事態は一刻を争う.
「父さんを救出するのはいつになりそうなの?」
いつもみたいな元気の良さがないと三国は思った.か細い声を上げるミトを見るのは三国にとってとても痛ましいことだった.蓮華が言う.
「三日後だ.三日後にベニバナは新規製品の記者会見を行う.そのときに警備は手薄になるだろう.そのときを狙ってアキラさんを救出する予定だ」
「装置ができるのはいつ頃なの?」
ミトが訊く.
「早くても一週間くらいだと考えている.だから,三日後に救出できれば大丈夫だ.そこは安心してもらっていい」
「どうやって救出するの?」
「そう,あせるなよミトちゃん.物事には順序があるんだ.お父さんを早く救出したい気持ちはわかるけど,今焦っても仕方ないんだぜ.蓮華さんと五右衛門がこれから話をするからもう少しだけ待ってくれよ」
ローリエが言った.普段軽薄なことを言っている割にこういう時にまともなことを言えるということは,軽薄なことを言っているのはローリエが何らかの意図をもってそういう風にわざと言っているのではないかと三国は思った.蓮華が言う.
「救出作戦は主には私たち三人が行う.私とローリエと五右衛門の三人だ.君たちにも協力は依頼しているが,君たちは中学生だし素人だ.やれることは限られてる.だから,比較的危険の少ない任務を君たちにはやってもらおうと思ってる」
「危険の少ない任務ってどんな任務ですか」
サイが口を挟んだ.
「君たちは空を飛べる.だがそれ以上に私たちがあてにしている君たちの能力は君たちが空を飛んでいるとき見えなくなるという能力だ.その能力を使って,陽動とアキラさんを救出した後に,アキラさんを空に抱えていってもらいたいと思っている.その方が追手が追ってこれないからな.ベニバナの本社のビルを君たちは見たことがあるかな?」
三国が口を開く.
「知ってますよ.東京の一等地に立ってるガラス張りのビルでしょ.遠くからでもよく目立ってますよね」
「そう.そのビルだ.君たちの内一人はそのビルの中に入って火災報知器を鳴らしてもらう.複数の火災報知機を同時にならすんだ.これでビルの中はパニックになるし,消防隊が出動してベニバナの超能力者は人目に付きやすくなって動きにくくなる.残りの二人は私たちと一緒に来てもらう.私たちがアキラさんを救出した後,アキラさんに飛んでもらって見えなくなってもらう.その時にアキラさんのそばで護衛する人が一人.アキラさんはかなり衰弱していると五右衛門は言っているから,介護役が必要だ.あとは,ローリエを持って行ってもらう係だ」
「ローリエさんを持っていくかかりってなんですか?」
三国が訊く.
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