第四章 動き出す歯車③
「アキラさんは転生のための生贄にされそうなんだ.転生に必要な装置がもうそろそろ出来上がる.装置が出来上がればアキラさんは転生のためのエネルギーに使われてしまうだろう」
五右衛門が真剣な顔をして言った.
「転生って何?」
ミトが言う.蓮華が重そうに口を開いた.
「私たちの世界では,異世界を通って超能力を手に入れたものから,そのエネルギーを抽出する装置があるんだ.超能力のエネルギーは人間の生命エネルギーと等価なんだ.だから,エネルギーを全て吸い取ってしまえばその人は死んでしまう.ただし,吸い取ったエネルギーは膨大で死者を生き返らせることができるんだ.超能力者一人を生贄にして死者を生き返らせることを私たちの世界では転生というんだよ.アキラさんは空を飛べる超能力者だから転生のための生贄にしようとしているんだろう」
「装置ができるまで時間がない.だから,アキラさんを一刻も早く救出しなければならない.そういうわけさ」
五右衛門が言った.
「鋼はこの世界に来ても誰かを転生させたいってわけかよ.執着が激しいねえ」
「この世界に来てもってどういうわけですか?」
三国がローリエに訊く.
「鋼は俺たちの世界で超能力者を生贄にして転生させようとしたんだよ.結局俺たちに見つかって未遂終わったがな.あいつはどうしても誰かを生き返らせたいんだろうよ.迷惑な話だ.俺たちの世界じゃ,転生は重大犯罪なんだ.転生が合法化されちまえば金持ちが好きな人間を生き返らせるために,超能力者に金を渡して生贄になってもらうなんてことが起きちまうからな.人間の命が直接的に金で買えるってことになっちまう.それだけは避けないといけない」
三国はローリエの話を受けて衝撃をうけた.鋼が誰かを生贄にしようとしていただなんて信じたくなかったからだ.確かに家庭はうまくいかなかったかもしれないが,そんなことをする人間ではないと三国は信じたかった.しかし,蓮華やローリエ,五右衛門の様子を見る限り鋼が超能力者を生贄にしようとしていたことは事実らしい.鋼が自分の父親であることを言うべきなのか,言わないべきなのか.蓮華たちはこの世界に来て日が浅いのか鋼のことをあまり調べていないのだろうと三国は思った.しかし時間が経てば自分が鋼の子だとばれてしまうだろう.しかし,今回はアキラさんを救出できればいいはずだ.むやみに情報を出して場を混乱させたくないとも三国は思った.今ここで自分の父親が鋼だと言ったらミトからどんな目で見られるかわからない.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます