第四章 動き出す歯車①

 翌日,三国は中学校に行った.教室には浅貝ミトがいた.ミトは昼休みに屋上で弁当を食べようと三国に言った.三国はミトと二人で教室から出ていくとき,これは何か変な噂になりそうだなと思ったが,ミトの方は何とも思っていないようだった.屋上に入るためのドアまで来るとミトは鍵を取り出し,ドアを開けた.

「その鍵どこで手に入れたの?」

「部室棟に入るために鍵を取りに職員室に入る人っていっぱいいるでしょ.私もそれに混じって部室棟の鍵を借りますっていって,その時に近くのフックに掛けられてた屋上の鍵を取ったのよ.それを持って近くの金物屋にいって合い鍵を作ったってわけ」

「屋上の合い鍵を作ったのはいいけどさ,僕たちは空を飛べるからそれで屋上に行けばいいんじゃないの? 飛んでる間は僕ら見えないんだし」

「それもそうだけど,空を飛んだ瞬間に見えなくなるのよ.急に人が消えたらびっくりするじゃない.トイレの個室とかに行けば見えなくなるけど常に人がいないか周囲を確認するのめんどくさいし,それに」

「それに?」

「こうやって,先生たちを出し抜いて合い鍵を作るのって楽しいじゃない」

 三国はため息をついた.

 屋上にはサイがいた.

「なんでサイがいるんだ?」

「私が呼んだのよ.これから蓮華さんとローリエと一緒に父さんを救出する仲間じゃない.交流を深めたいとおもってね」

 蓮華はさん付けなのにローリエは呼び捨てなんだ,と三国は思った.

 三国とサイとミトはお昼ごはんを食べ始めた.三国とミトは弁当だが,サイはサンドイッチを食べている.

「サイ,そのサンドイッチはどうしたんだい?」

 三国が尋ねた.

「ああ,このサンドイッチかい? このサンドイッチは拾ったのさ.コンビニがあるだろ? その近くのごみ箱に大量に捨ててあるのさ」

 三国とミトは顔を見合わせた.

「あなたそんなものを食べてるの?」

 ミトが言う.

「大丈夫だよ.拾って食べたものでお腹を壊したことはないよ.ちゃんとビニールで 

 ミトは絶句していた.三国がサイに尋ねる.

「そういえばサイは家とかあるの? 夜中,寝る場所に困るだろ?」

 サイはまた何ともないという顔をして言った.

「寝るとこなんて必要ないさ.宙に浮かびながら寝れば何も問題はないんだよ.ときどき来るカラスとか鳥に注意すれば何も問題ないよ.君らは夜寝るときはまだ,ベッドで寝てるの?」

「当たり前でしょ.私は生まれたときから空を飛べるけど宙に浮かんだまま寝るなんて器用なことできないわ」

「なれればできるよ」

「あきれた」

 ミトがもう,うんざりという顔をした.

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