第二章 僕らの知らない世界⑨
「超能力者って具体的にはどんなことができるんですか?」
三国が言った.
「瞬間移動,好きな時に火を起こせるパイロキネシス,その他もろもろかな」
「その他もろもろって......」
「どんな種類かは人による.だから,よくわからないんだ.君らだって超能力者だろ.空を飛ぶことができる.それに空を飛んでる間は透明人間だ.利用方法によっちゃ世界を滅ぼすことだって可能になる能力なんだぜ」
「ベニバナが超能力者で妨害工作していたっていうのは分かったけど,それがアキラさんとどんな関係があるんですか?」
「ベニバナが空を飛ぶ能力と空をとんでいる間に人に見えないようになる,透明人間になる能力を欲しがってるのさ.それに俺たちの仲間にベニバナの内通者がいてそいつが,アキラさんらしき人物をベニバナの社内で見たという情報もある.ともかくこのままだと,アキラさんは何らかの犯罪行為に加担させられるか,なにかもっと大きなトラブルに巻き込まれる可能性が高い.早急に助け出さないといけない」
「アキラさんのことは分かったとして,あなたたちは何者なんですか? なんでそんなにベニバナが超能力者を使っていろいろな悪事をしていると知っているんですか?」
「それは私も聞きたいわ.母さんから,探偵さんを雇ったって言って,蓮華さんとローリエさんを紹介してもらったけど,なんでそんなに詳しいのか気になるわ」
蓮華とローリエは顔を見合わせた.
「どうします,蓮華さん.どこまでしゃべっていいんですかね」
「いずれすべてわかることだ.私からすべて話そう」
蓮華は三国たちに向き合った.
「私たちは,いわゆる異世界の人間なんだ.君たちのいる世界とは違う平行世界の人間だ」
「平行世界?」
三国が言った.
「そう.平行世界.平行世界でも,悪事を働く人間がいる.だから,それを取り締まる人間もいる.私とローリエも取り締まる人間だ.私たちの世界では君たちの世界より文明が進んでいてね.まだ,一部の人間だけではあるが,平行世界に自由に行き来できる.ベニバナの社長の紅鋼は,それを悪用して私たちの世界で犯罪をして,この世界に逃げ込んだんだ.それを私たちが追っているというわけだ.それに,異世界に移動するときにある特殊な空間を通る.それで最近分かったことなんだが,その空間を通ると何かしらの超能力を手に入れることがあるということが分かったんだ.それを紅は利用して,仲間を引き連れて異世界に移動して,その超能力でこの世界に会社を作って金を稼いでいるというわけさ.だから,我々の調査に君たちは協力してもらうことになる」
三国はサイの方を向いて言った.
「サイ,今の話聞いたかい?」
「聞いたよ」
「君も異世界人なんじゃないのかい?」
「分からない」
「どういうことだね?」
蓮華が三国とサイをみた.サイはこの世界に来た経緯を蓮華とローリエに話した.
「その話を聞く限り,サイ君はどこかの異世界からなんらかの時空の断裂のトンネルのような場所を通ってきてこの場所に来た可能性が高いね.ただし,元居た異世界が私たちのいた異世界かどうかは分からない.残念ながら異世界はたくさんあるんだ.私たちの世界から来たのかどうかは調査しておくよ」
「ありがとうございます」
サイが蓮華に対して言った.
「さて,今日は長い話になってしまったが,これからよろしく頼む.なにかやってほしいことがあったら連絡するから,今日は帰ってもらって構わない.ありがとう」
蓮華がそういうと,蓮華とローリエとミトをその場に残して,三国とサイは帰路についた.
三国は自分の家についてくたくたになってベッドに横になった.今日はいろいろなことが分かり,驚くばかりだった.超能力者が自分たち以外にもいたことは意外でしかなかったし,異世界の話もいまだに信じられなかった.しかし,三国が一番驚いたのはそこではなかった.三国が一番驚いたことは,三年前に離婚した三国の父親である,紅鋼が,ミトの父親の失踪事件にかかわっているということだった.
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