第二章 僕らの知らない世界⑦

 ミトの家の前に三国とサイとミトは降り立った.ミトの家は森の中にあり,家が木々に囲まれていた.家の前には,髪の長い二十台後半くらいの女と大学生くらいの男がいた.大学生くらいの男はバイクにのって,バイクのキーホルダーで遊んでいる.女の方は何も言わずに煙草をふかしていた.

「ローリエ,ミトさんが約束の人間を連れてきたぞ」

 女が男に声をかけた.ローリエと呼ばれた男がバイクのキーホルダーをいじるのをやめて三国たちの方を見た.

「あ,本当だ.ミトちゃんがいる.本当に空を飛ぶっていうのは不思議だねえ.一瞬でこっちには現れたり,消えたりするように見えるんだからさ.こっちは何の準備もできないから,まいっちゃうよ.空飛んで,見えない間にこっちの行動が全部みられてるんじゃないかって冷や冷やするね」

「見られちゃマズイ行動をしてることがあるんですか?」

 三国がやや配慮に欠けた質問をした.

「あるさ,人間誰にだって見られたくないものとか,秘密とかってのは抱えてるものなのさ.いや,抱えていくものと言った方がいいかな.君らの年代だとそういうことは少ないかもしれないけど,大人になるにつれてそういうものがどんどん増えてくんだよ」

 僕らと五歳くらいしか年が違わないのに,自分をずいぶん大人扱いするんだなあ,と三国は思った.

「ローリエ,依頼人の前だぞ.ちゃんとしろ.それに他人に知られたくない行動は私の前でもするな」

「はいはい,分かりましたよ.蓮華さん.これから気を付けまーす」

 ローリエは何も反省する気もなさそうな声を出して言った.

「三国に,サイ,こちらは探偵の蓮華さんとローリエさん.お母さんが雇った二人組の探偵さんよ」

 ミトが三国とサイに向かって言った.

「遅れましたが,初めまして.私の名前は蓮華.バイクに乗ってる男は私の助手のローリエだ.ミトさんのお母さんに頼まれてアキラさんの行方を追っている.よろしく頼む」

 髪の長い女が三国とサイに向けて言った.ローリエが口を開く.

「そういうこと.俺の名前はローリエね.よろしく.俺たちはアキラさんの行方に関する情報はいろいろ持ってるんだけど.ちょっと今回のアキラさん失踪事件はアキラさん自体が空を飛ぶっていう超能力を持ってるせいで少し厄介なことになっててね.アキラさんと同じ空を飛べる君たちに協力してほしいことがあったんだ.だから,ミトちゃんに君たちをここまで連れてくるように頼んだ.ところで,君たちは俺たちに協力してくれるのかな?」

「いいですよ,アキラさんのお父さんを助けるってことでここまでミトさんについてきたので」

 三国が口を開き,サイが首肯する.

「そう.一応,彼らには協力してくれるか確認は取ってあるわ.だから,お父さんの情報を彼らに言っても大丈夫です」

 ミトが蓮華に向かって言った.

「分かりました.依頼人が連れてきた捜査協力者ということであれば,大丈夫です.早速ですが,アキラさんのことについてお話しましょう」

 蓮華が三国とサイに向かって言った.

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