第二章 僕らの知らない世界④

「君は僕らの姿が見えてるんだね」

 サイが柵に手をついているミトに向かって言った.三国とサイはミトが手を置いている柵の反対側で浮かんでいる.

「そうよ.生まれたときから,空を飛んでる人間は見えてたわ.私は生まれたときから,空を飛べるもの」

 ミトがいたずらっぽく笑って言った.

「そうれっと」

 ミトがそういうと,柵を飛び越えて空に浮かんだ.三国たちと同じ目線になった.三国とサイとミトは屋上と同じ高さで宙に浮いていた.

「ほらね,飛べるでしょ.空を飛べるのはあなたたちだけじゃないのよ」

 ミトは得意げに言うと,空中で足を動かして,歩いていた.自分の力を見せびらかすように,そしていたずらっぽく歩いている.

「ミトは僕らの姿が見えるのに,どうして見えないふりをしてたの?」

 三国が尋ねた.

「良い人かどうか確かめたかったのよ.初対面の人がいたからって話しかけるとは限らないでしょ.だから,ちょっと悪いと思ったけど試したかったのよ.だから,わざと生徒手帳を置いて行ったの.ちゃんと私に届けてくれるかなって.そしたらちゃんと三国君は届けてくれた.だから,信用してもいいかなって思ったのよ.それにね,空を飛ぶ人間は私の家族以外で初めて見たの.だから,ちょっと困惑してた.空を飛んでるのが見えるってことは自分が空を飛べるって言ってるようなものじゃない.そう簡単に人に言いたくなかったの」

 ミトは円を描くようにしてスキップしている.妙に楽しそうだなと三国は思った.

「僕から質問してもいいかな?」

 サイがミトに尋ねた.

「構わないわよ.なんでも聞いて」

「君が生まれたときから空を飛べたっていうのは本当かい?」


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