第二章 僕らの知らない世界③

放課後,三国はサイと出会った公園に行った.公園にサイの姿は見えなかった.

「三国君じゃない.どうしたの?」

 三国の頭上からサイの声がした.三国が見上げるとサイが二メートルほどの高さで浮いていた.三国はサイを見上げながら見ていたので,太陽がまぶしかった.

「君に会ってもらいたい人がいてね,一緒に中学校の屋上まで来てほしいんだ」

「会ってほしい人って,どんな人?」

 サイが地面に降り立った.

「ミト,浅貝ミトに会ってほしんだ」

 サイが少し考えてから,言った.

「ああ,あの屋上にいた子ね.なんでだい?」

「実は彼女,僕らが屋上にいたことを知ってるみたいなんだ.彼女は生まれたときから空を飛べるらしい.それに,彼女の家族には僕らと同じように空を飛べる人がいるみたいなんだ」

 サイの顔色が変わった.サイは少し動揺しているようだった.

「それは本当かい?」

 

「多分,嘘じゃないと思う.普通空を飛んでたよね,なんて嘘でもいわないだろ.とにかく彼女にあってみないか?」

「行こう.何か新しいことがわかるかもしれない」

 サイはそう言うとにわかに空に浮かんで中学校の屋上の方へ向かって行った.慌てて,三国がついていく.

「やっぱり,気になるかい? サイ」

 サイがものすごいスピードで飛んでいるので,風がすごいスピードで三国に当たっていた.風に声をかき消されてしまったからか,サイからの返事はなかった.三国の前方をサイが飛んでいるため,三国からサイの顔は見えない.サイは今どんな表情をしているのだろうかと三国は思った.すごいスピードで空を飛んでいたので,すぐに,学校の屋上が見え始めた.

 学校の屋上では浅貝ミトが柵に片手を置いて,笑顔でこちらに向かって手を振っていた.

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る