第二章 僕らの知らない世界②
翌日,中学校に三国が行くと,珍しくミトは学校に来ていた.お昼休みに三国はミトの席に行った.ミトは自分の席で文庫本を読んでいた.その姿だけを見ると,おとなしそうな普通の女の子のように三国には見えた.なんで,この人は学校にほとんど顔を出さないで,街で何かの軍団のリーダーみたいな役割を担ってるなんて噂が出回るんだろうと三国は思った.
「ミトさん」
三国がミトに声をかけた.三国が浅貝ミトをミトさんと呼ぶのは,浅貝さんが三国のクラスにもう一人いるからである.ミトは自分の読んでいた.文庫本を閉じて,三国の方を見た.
「なに?」
「昨日,ミトさんの生徒手帳を拾ったんだ.だから,それを返しに来た」
三国はミトに生徒手帳を手渡した.ミトは生徒手帳を受け取った.
「ありがとう.お友達とお空を飛んでた三国君」
三国は驚いた.サイの話では,空を飛んでいることを見れる人間はそうそういないはずだったし,昨日のミトの素振りからは自分たちの姿が見えているような様子はなかった.しかし,ミトの様子からは何かカマをかけているようには見えなかった.いたずらっぽくミトは笑っている.
「何をバカなことを言ってるんだ.人間が空を飛ぶはずはないだろ」
三国が動揺しながら言った.三国自身はなるべく動揺を表に出さないようにしているつもりだったが,自分でも動揺していることが表に出てしまっていることは自覚していた.ミトは少し笑いながら,小さめの声で言った.
「嘘,ついたって,ダメ.あたしもね,空飛んでる人間が見えるの.生まれたときからね.でも,私の家族以外で飛べる人は初めて見たわ.教室でこんな会話してたら,ちょっとおかしい人みたいに見えるから,放課後に屋上に来てよ.昨日,空を飛んでた友達と一緒にね」
ミトはそう言うとまた,文庫本を開いて読書に戻ってしまった.三国は動揺を隠せなかったが,ミトのいう通り,放課後サイを連れて屋上に行くことにした.
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