第一章 日常の中の非日常②

三国と少年は公園の中央で向かい合って,少年の両方の手のひらの上に三国が手を合わせて置いていた.

「君,名前はなんていうの?」

 三国が緊張をほぐすために少年に尋ねた.三国は合って数分で空に飛んで行った少年に多少の恐怖感があり,緊張していたが,少年の方は何ともなさそうだった.

「サイ」

「サイっていう名前なのかい?」

「そう,そろそろ飛ぶ方法を教えるよ.このまま手を僕の手の上に置いて目を閉じて,何も考えないようにする.次に自分が浮き上がるイメージをする.このときに自分が浮かぶこと以外のことを考えちゃいけない.なるべく浮くことだけを考えるようにするんだ」

 三国は際に言われて通り目を閉じた.そして,自分の体が浮かび上がることを考えた.なるべくほかのことを考えないようにした.すると,サイに言われた通り体が宙に浮き始めた.

「そう,いい感じ.そのまま,僕と一緒に飛んでみよう」

 サイがそう言った次の瞬間,三国とサイはものすごいスピードで上昇し始めた.あまりのスピードに三国が思わず声を出した.

「ちょっと,いきなりこんなに上がって大丈夫なのかい」

「大丈夫,最初はびっくりするかもしれないけど,落ちることはないからね.ほら」

 サイは三国から手を離した.一瞬,三国は驚いたが,自分が落ちることなく空に浮かんでいることに気づいた.

「すごいや,本当に空を飛んでる」

 三国が歓喜の声をだした.

「僕の言った通りだろう.飛ぶ人間を見れる人間は飛ぶ才能があるのさ.もう,君はこれから自由に飛べるよ.行きたいところならどこにでも行ける.どこか行きたい場所はあるかい?」

「そうだな,とりあえず,学校に行ってみようかな.空からあの学校を見てみたいんだ.僕らが飛んでる姿はほかの人には見えてないんでしょ?」

「そうだね,ほぼ百パーセント見えない.君みたいに飛ぶ人間をみれる人間なんて十年に一人いるかいないかだからね.これから十年は僕らの姿が見える人間はでてこないよ.とりあえず,学校に行ってみようか.案内してよ」

 三国はサイを連れて,学校の方角へ飛んで行った.

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