第155話 ゲーム終了。そして帰還……?
「………………ッ!?」
俺の放った弾丸は、久之池の顔面…………を避け、後ろにあったカメラに命中した。それは粉々に割れ、辺りにレンズの破片が散らばったようだ。それで……自分がまだ生きていることを自覚した久之池は座り込み、呼吸を荒くさせていたんだ。
「………はぁっ…………はぁッ……!!」
そんな久之池に向かって、俺はただ冷淡に。
「勘違いするなよ、久之池。俺は情けをかけた訳じゃない。お前には死よりも辛い目に合って欲しかっただけだ」
「……はぁッ……!! ……はぁッ……!!」
「悪事を認め、罪を償い続けろ。それがお前を生かした理由だ」
まぁ……んなこと言ってカッコつけてるけど、さっきまで俺は本気で、久之池を打ち抜くつもりでいたんだ。でもこいつがどれだけ憎かろうと、俺の私情で殺して良い訳がない。撃つ直前にそのことに気付いたんだよ。
ま、それと……俺が前科持ちになったら、彼女達が悲しむだろうからってのもあったけどね。直前に俺が思いとどまれたのは、彼女らの顔が浮かんだからと言うのも大きな要因だろうな……本当にありがとうみんな。愛してるぞ。
……で。久之池の状態はと言うと、相当おかしな状態になっているようだった。久之池は床に座り込んだまま、狂ったように笑い続けて。
「はっ…………はは。ははっ、あははっ、あははははッ!! 一端なこと言いやがってェ!! おめぇは覚悟が無かったから外したんだよォッ!!!!」
「おっ、自分が無事だと分かったら急に饒舌になったね。どんだけ無様なの?」
「ああぁん!? んなの知るかよッ!! てめぇは外したんだ!! だからこの勝負、オレの勝ちなんだよォ!! 神谷ァぁあああああア!!!!」
「違うよ。勝ったのは俺さ」
俺は男性に視線を向けると、彼はこくりと頷いて。
「はい。この勝負、勝利したのは神谷様です」
「はぁ!!?? 意味わかんねぇ!! ふざけんなッ!!!!」
「ふざけてなんかないよ。チャレンジは『弾丸が発射されれば勝ち』って言ってたからさ。それがどこに当たろうが、俺の勝ちなんだよ」
そう。俺が言った通り、チャレンジは弾さえ発射されれば良かったんだ。相手に銃口を向けるとは言ったけど、相手を撃つとまでは明言していなかったんだ。だからこうやって死人を出さずに勝つルートだって、しっかりと用意されていたんだよね。
それで久之池は、このタイミングでゆっくりと立ち上がって……。
「…………そうかよ。だったら…………」
テーブルに置かれたままの銃を両手に取り。
「なっ!?」
「ここで死ねぇッ!!! 神谷ァぁああああああ!!!!!!」
俺に銃口を向け、引き金を引きまくったんだ。その二つ銃に弾が込められていないと分かると、それを捨ててまた二つの銃を手に取って、引き金を引き始めたんだ。
これはマズいと俺は反射的にテーブルに乗り、走って久之池に近づいて……。
「うぉらァッ!!!」
「ガッ…………!?」
奴の顔面に飛び蹴りしたんだ。蹴りを食らった久之池は大きく吹っ飛ばされ、手から銃を落とす。更に奴に近づいて様子を確認してみると、完全に気絶していることが分かったんだ。
「はぁ……マジで最後に弾込めてて良かったぁ……あ、ちょっと縛るロープか何か持ってきてくれません?」
そこで俺が男性らにお願いすると、思ったよりも言うことを聞いてくれて。返事の後に、何か縛るための物を探しに行ってくれたんだ。
……それで久之池を押さえつけたまま、数分待ったままでいると……何やらドタドタと大勢の足音が、扉の前から聞こえてきて。
「開けろ!! 警察だ!!!」
と、コナー君並みのクソでかボイスで訴えてきたんだ。警察……まぁ、あんな発砲の映像を見たら、そりゃあ来るわな。久之池も捕まえて欲しかったのもあった俺は、特に渋ることも無く扉を開けたんだ。
そしたら……突入の号令と同時にシールドを持った警官が何十人も入ってきて、俺を取り囲むような陣形を取り出したんだ。あれ、なんかこれ……マズい展開か?
そんなことを思ってると、一番偉そうな警官が後ろから拡声器を使って、こうやって俺に言ってきたんだ。
「神谷修一! さっきのゲームで起こったことについて話を聞かせてもらおうか!」
「え、あ、はい……」
────
数十時間後。
「ああ……酷い目にあった……」
それから俺は色々と話したものの、結局警察署に連行され、個室で質問攻めにあったんだ。ゲームで使われた銃が本物なのは知っていたのかとか、殺意はあったのかとか……俺は「知りませんでした」「無かったです」「いっぱいいっぱいでした」「そろそろ帰らしてください」と正直に答え続けたが、中々解放してくれずにいたんだ。
それで何日も捕らえられるんじゃないかと、かなり落ち込み、疲弊していたのだが……半日過ぎた辺りで動きがあったのか、そこで俺を解放してくれたんだ。どうやら久之池が密かに『拳銃とルーレットを使ったゲームをやってくれ』と運営側に賄賂を送っていた、という情報が見つかったらしい。
まぁ詳しく聞けなかったから俺の予想もかなり入ってるけど、大方そんな感じで間違いないだろう……で。やーっと警察から解放された訳なんですけども。もう朝日のぼってるんですけど、ねぇ。大会に行ったのが昼過ぎだから……約二十時間? くらい拘束されてたってことになるのか?
つーか今の時間を知ろうにも、端末取られたままだから分からないんだよな。もちろん藤野ちゃん達に連絡取ろうにも取れないし……ああ、クソぉ……こっから歩いて帰れって言うのかよぉ……これがレジェンド大会優勝者の扱いかよぉ……歴代で一番不憫なチャンピオンじゃないのか、俺?
というか……そもそも俺はチャンピオンになっているのか? あんな事件起こったんだし、大会が無効になっている可能性だって考えられない訳じゃないよな。もしそうなっていたら、俺はどんな顔してみんなに会えば良いんだよぉ……ああ、クソぉ。疲れと眠気で、真っすぐに歩けねぇよ……倒れそうだってばよ……。
「あっ、あれ王子様じゃないですか!?」
「……?」
あれ、なんか聞き覚えのある優しい声が……幻聴じゃないよな……?
「本当だ! おーい神谷君!!」「こっちだぞ、シュウイチー!!」
「あれ……なんで……?」
フラフラしながら正面を見ると、そこには俺らの仲間が……藤野ちゃん、朱里ちゃん、真白ちゃん、透子ちゃん、花音ちゃんが笑顔で出迎えてくれていたんだ。
「ど、どうして……ここに?」
「修一が警察に連れてかれたって情報があったからさー。私達、警察署の前でテント張って、修一が出てくるの待ってたんだよー?」
「あ、もちろんウチの提案だよ!」
ああ……みんな俺の帰りを待っててくれたんだな。何だか仲間の顔を見て、ホッとして倒れそうになるが……その前に聞いておかなきゃいけないことがあるんだよ。
「なぁ、みんな……俺、やったよな……!? 勝ったよな……!?」
涙目で俺はみんなに問い掛ける。その言葉に藤野ちゃん達は笑顔で頷いてくれて。
「うん! 神谷君は成し遂げたんだよっ!」
「大丈夫です! 王子様はちゃんと優勝していますよ!」
──優勝。その言葉を聞いた俺は、本当に安心して力が抜けてしまったんだ。
「そっか……本当に良かったぁ……!!」
「ああっ、王子様! 倒れちゃ駄目ですよっ!」
「ふふっ、いいじゃん。寝かせてあげようよ。こんなに頑張ってくれたんだからさー?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます